自民党総裁選では全候補者が「改革」を語り、日本経済をふたたび成長軌道に乗せるとか、所得を倍増させるとか威勢のいい話をしていますが、具体策には見るべきものがありません。その最大の原因は、日本経済がなぜ行き詰まったのかという原因を理解していないからです。
1990年からの「失われた35年」の中で、日本の実質成長率はG7最下位でした。その大きな原因は高齢化による労働人口の減少ですが、1人あたりでみても図のように実質賃金の成長率はOECDの最下位グループです。
かつて世界ナンバーワンともいわれた日本が、30年あまりでここまで衰退したのはなぜでしょうか。安倍政権はその原因が「デフレ」だと考えて大規模な量的緩和をやりましたが、インフレになっても成長率は上がりません。
これは財政・金融などの短期の問題ではなく、生産性や国際競争力などの長期の問題ですが、こっちはほとんど手がつけられていません。むしろ新型コロナで大量に補助金がばらまかれ、経営が実質的に破綻しているのに延命されているゾンビ企業が増え、企業の新陳代謝が進んでいません。
特に厄介なのは雇用の流動化です。これも20年以上いわれていますが、まったく前進しません。今回の総裁選では小泉進次郎氏が「解雇規制の緩和」を初めて打ち出し、河野太郎氏は「金銭補償ルール」に言及しましたが、高市早苗氏はこれに反発しています。
10月からのアゴラ経済塾では、日本経済の新陳代謝を進めるにはどうすればいいか、企業は何をすべきかを考え、ビジネスにも役立つセミナーにしたいと思います。授業はすべてオンライン(Zoom)で行うので、全国の(あるいは海外の)みなさんも視聴できます。録画をあとからYouTubeで見ることもできます。
講師:池田信夫(アゴラ研究所 所長)
テーマ(例)
新政権で日本経済は新陳代謝できるか 日本の成長はなぜ90年代に突然止まったのか 政府や日銀はどこで失敗したのか 小泉改革が非正規労働者を生んだのか アベノミクスは何だったのか 雇用はどうすれば流動化するのか これからどうすれば日本経済は復活するかなど受講生のみなさんの関心に応じて決めます。