神経学者には小さな生き物に対し、頭脳がどのように機能して可愛らしいという感情を生み出すのか、その感情は性別、文化、民族の違いで異なるのかなどを研究する学者がいる。通称、Cuteness Studies(可愛らしさの研究)と呼ばれる。その分野のパイオニアは神経学者Morten Kringelbach氏だ。同氏は「可愛らしさはスーパーパワーだ」と述べている。多くの学者は可愛らしいという感情がどのような神経ネットワークで生れてくるのかを脳磁図(MEG)などを駆使して研究している。興味深い点は、眼前に小さな動物や赤ちゃんがいると認識する前に、頭脳は既に「その対象は可愛らしい。保護する価値がある」というシグナルを発していることだ。

イスラエルの文化学者シリ・リーバー・ミロ女史(Shiri Lieber Milo)は長い間日本に住み、研究してきた。女史の現在の専門は「可愛らしさの心理学」だ。彼女は「規律が厳しい日本社会でポケモンやハローキティが溢れ、至る所に可愛らしさが見つかる」と述べている。

例えば、日本では人間の赤ちゃんは動物のベビーより可愛らしく感じる。一方、イスラエルでは逆だという。イスラエルは出産率が高い国だ。一方、日本は少子化社会だという人口学的な相違があるのかもしれない。また、可愛らしいものを身近に置いたり、見ることで日々のストレスを削減できるという。例えば、オフィスの壁に子猫のポスターを飾れば、ストレスが減少するという。

リーバー・ミロ女史は日本では小さな可愛らしいものへの需要が多く、日本の可愛い文化(Kawaii文化)を生み出しているという。同女史によると、日本の可愛い社会は一種の文化現象だが、可愛いものへの反応は国や文化を超えて同じだという。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年9月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。