イオンや西友、イトーヨーカ堂、ライフ、マルエツ、オーケーなど誰もが名前を知る大手スーパーマーケット。その運営母体は大手企業だが、意外にも就職先としてはいまいち人気が低いようだ。その理由は何なのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 以下のように大手スーパーマーケット運営会社の売上高、従業員数は大きい。

※社名、売上高、連結従業員数
・イオンリテール、1兆8419億円、7万3317人(2024年2月末現在)
・イトーヨーカ堂、8150億円(イトーヨーカ堂事業)、2万8432人(2024年2月末現在)
・ライフコーポレーション、8097億円、3万1576人(24年2月期)
・ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)、7066億円、7192人(24年2月末現在、臨時社員を除く)
・西友、6648億円、2万人(24年8月1日現在)
・オーケー、6238億円、1万7292人(24年3月期)

※売上高は2023年12月、24年2月期、24年3月期
※USMHはマルエツ、カスミ、マックスバリュを展開しており、11月に「いなげや」が傘下に入る。上記数値に「いなげや」分は含まれない。

 いずれもれっきとした大企業といえるが、共通して、特に大学新卒者の就職先として人気が高くなく、人材確保に頭を悩ませているという課題を抱えている。その理由について、チェーンスーパー関係者はいう。

「今ではめちゃくちゃな長時間労働というのはほとんどなくなっており、休日も常識的なレベルで取得できるようになりましたが、スーパーはほぼ年中無休で早朝から深夜まで営業しており、変形労働時間制というシフト制の形態が一般的です。よって土日出勤が当たり前で、全国展開しているチェーンだと頻繁に県をまたいだ転勤が生じることも覚悟しなければなりません」

もっとも大きな理由は給料の安さ?

 仕事内容そのものにも理由があるのではないか、という声も聞かれる。

「大卒社員の場合、将来的には店長やエリアマネージャー、本社勤務などのキャリアパスが用意されていますが、まずは現場の業務を知るために現場に配属されるのが一般的で、スーパーだと店舗のバックヤードで生鮮食品の加工や調理をしたり、品出しや発注業務、レジ、クレーム対応をしたり、物流拠点で力仕事をしたりと、パート・アルバイト従業員と変わらない仕事をすることになります。そういうことに抵抗を感じるという若者もいるでしょう。このほか、単なる世間的なイメージからか『飲食業界とスーパー業界は嫌だ』という声は昔から根強く、学生さんは行けるならメーカーや金融、ITなどへ行きたいという風潮が強いように感じます」(チェーンスーパー関係者)

「この業界が人材獲得に苦労するもっとも大きな理由は給料の安さでしょう」と別のチェーンスーパー関係者はいう。

 例として、有価証券報告書で年間平均給与が確認できるスーパー各社の金額は以下となっている(給与が高い水準となる傾向がある持ち株会社などを除く)。

・オーケー:325万円(23年3月期)
・ヤオコー:618万円(24年3月期)
・ベルク:537万円(24年2月期)

「流通業界は他の業界と比べて非常に生産性は低いです。理由の一つは、リアル店舗をはじめ多くの設備を必要とする装置産業であるという点です。もう一つの理由は多数の人員を投入しなければならない人手産業であるためです。人件費や設備費用として多額の経費が常に発生するため利益率が低く、AIやDXの活用でできるだけ生産性を上げていく必要があります。利益率が低いことは給与水準の低さにつながり、さらに土日が休めなかったり立ち仕事が多いという事情も重なり、外食と並んで就活で人気がない業界となっており、人材確保が難しいという点は業界にとって長年の課題となっています」(4月28日付当サイト記事より)