ヨーロッパを中心とするEV推進の流れもあり、普及率拡大が期待されるEVですが、日本国内の状況を見てみると、2023年における登録車(乗用車)の新車販売に占めるEVの割合は約1.7%と(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会の調べによる)、定着が進んでいるとは言いがたい状況です。

日常的な使い勝手への懸念や、インフラ面の不安、新しい技術に対する抵抗感など、普及が滞っている理由はさまざまに考えられます。しかし実際のところ、現にEVを所有している人たちは上のようなデメリットを感じているのでしょうか。

今回はとくに「車が必須とされている地域で、EVをメインの車として使っているオーナー」に焦点をあて、率直な感想を聞いてみました。

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軽EVは送迎や買い物に最適?

軽EVは送迎や買い物に最適?

「車が欠かせない地域にEVは向かない」って聞くけど…実際どうですか?EVオーナーへ直撃!EVとの「うまい付き合い方」が見えた
(画像=@umaruchan4678/stock.adobe.com、『MOBY』より 引用)

EVに乗ったことがない人にとって、まず懸念されるのが「これまでの車と同じように使えるのか」という問題でしょう。「ハイブリッド車などと比べると、一度の充電で走れる距離が短い」といった意見もあり、これだけ聞くと「毎日使うには不便なのでは」と思ってしまいますが、実際のところはどうなのでしょう。

「自宅をリフォームするときに、息子に勧められて軽のEVを買ったんですよ。太陽光パネルを屋根に載せたんですけど、それならEVにした方がお得なんじゃないかって。

一度に走れる距離は限られているけど、もう近所の買い物くらいにしか使っていないもので。『決まった場所にしか行かないなら、小さいEVでいいんじゃないの』と言われましたが、そのとおりでしたね。

旅行に行くときはもう、自分では運転せずバスツアーや新幹線ですし。ガソリンスタンドにも行く必要がないし、あまり走らないので、充電は家で週に2回か3回。私と同じような人には向いているんじゃないかな。静かだしいいですよ」(70代男性、埼玉県北部)

たとえば日産の軽EVであるサクラの航続距離は「180km」とされています。旅行などを考えると、複数回の充電が必要になると思われますが、毎日の送迎や買い物がメインの用途であれば、とくに不便を感じることもないようです。

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年に数度の旅行なら、あまり不便に感じない

年に数度の旅行なら、あまり不便に感じない

「車が欠かせない地域にEVは向かない」って聞くけど…実際どうですか?EVオーナーへ直撃!EVとの「うまい付き合い方」が見えた
(画像=@joel_420/stock.adobe.com,『MOBY』より 引用)

それでは、もう少し長い距離を乗る場合はどうなのでしょう。日産・アリアのオーナーは次のように話します。

「もう30年くらい同じ日産のディーラーから車を買っていて、前の車がそろそろ車検になる頃、営業さんからアリアを勧められたんですよ。これからはこれが看板になるって。たしかにデザインもスタイリッシュで、見た目はすぐに気に入りましたね。

はじめてのEVだったので、ちょっとどうなのかなとは思いましたけど、これからどんどん他の車もEVになるっていう話をされて。私も還暦を過ぎてますし、それなら今のうちに慣れておかないと、後になってからじゃ適応できなくなるんじゃないかって怖かったのもあります。

実際に乗っていて、総合的には満足していますよ。もちろん旅行先で充電スポットを探さなきゃいけなかったり、空き状況がわからなかったりといった面もありますけど、私の使い方だと出先で充電が必要になるケースは年に数回ですし。

航続距離はカタログ上だと470kmで、まぁ条件が悪くても300km程度は走ってくれますから、充電設備のある宿を先に見繕っておけば心配もなくなりますしね。

そういう不安よりも、ガソリンスタンドに行く必要がないことや、加速性能や静粛性といった利点の方が大きく感じます」(60代男性、埼玉県西部)

このように、「近所の買い物や送迎+年数回の旅行」といった使い方でも、充電スポットなどで困るケースはほとんどないようです。もちろん旅行先までの距離が増えるほど、充電の必要も出てくると思われますが、それでもたまの長距離移動であれば「事前に対処できる範囲」で済むのかもしれません。

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外出先で頻繁に充電する場合は…

外出先で頻繁に充電する場合は…

「車が欠かせない地域にEVは向かない」って聞くけど…実際どうですか?EVオーナーへ直撃!EVとの「うまい付き合い方」が見えた
(画像=©rockstarpictures/stock.adobe.com,『MOBY』より 引用)

上のお話にもあるように、EVは現状でも「近距離移動がメイン」「遠出は年に数回」といったスタイルであればストレスを感じにくく、むしろ燃料を使わないメリットが大きく感じられるようです。

一方で、EVで年間2万km以上走行しているというオーナーからは次のような意見も聞かれました。

「昔から新しいものが好きなので、3年ほど前にテスラのモデル3を買いました。この辺りでEVに乗っている人はなかなかいませんから、今でも珍しがられますね。

車というよりはスマートデバイスみたいな感じで、買ったときは感動だらけでしたね。ただやっぱりメインの車として使っていると、充電スポットの少なさなど不満なところも出てきます。

自宅で充電できるので、近所にスポットが少ないのはいいんですけど、旅行先とかはある程度考えなきゃいけないですね。スポット自体があっても24時間はやっていなかったりするので、下調べは必須ですし。

充電待ちの渋滞にはさほど遭遇していませんが、やっぱり連休とかだとそれなりに待つことはありますね。なので混雑しそうな日は、ある程度ルートや充電タイミングを考えて動いています。

地味に面倒なのが、施設ごとに充電時の認証システムが違ったりすることです。充電カードがあればスムーズですけど、施設によってはそのカードに対応していなかったりするので、そうなると認証作業がいちいち面倒なんですよね。

ちょうど、キャッシュレス決済のイメージに近いと思います。たとえばSuicaで大抵支払えるけど、たまに対応していないところがある、みたいな。まぁ、1枚のカードでもほとんどのスポットはカバーできるので、そういう不便もこれまで2回か3回くらいでしたけど。

これまでの車と比べると、自宅周辺での普段使いには便利ですが、どんな場面でもストレスなく使えるかという点では、まだ改善点があるのかなと思いますね」(40代男性、千葉県南部)

不特定多数のユーザーによる充電が想定される充電スポットでは、基本的に利用者を特定するための認証作業が必要になります。この際、認証作業を簡易化してくれるのが「充電カード」です。

たとえば利用者の多いe-Mobility Powerカードであれば、大部分の充電スポットをカバーしてはいるものの、現状のところ少数ながら非対応の施設もあり、また所持にあたっては月額費用が発生します。

一方で、これらの充電カードをもたないデメリットとしては、「ビジター料金」として充電費用がやや割高になることや、認証作業がその都度必要になるといった点が挙げられるようです。

ここまでの話をふまえると、EVの普及が進まずにいる要因として、「充電スポットの数」といった問題のほかにも、上のような「認証作業や下調べの手間」などの問題もあるのかもしれません。

EVを「メインで使える車」として普及させていくうえでは、車両の性能向上や低価格化といった要素以上に、認証システムや充電規格といった面での「わかりやすさ」も期待されているのでしょう。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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