では、流通量は流動性を規定するのであろうか。例えば、同じ満期10年の国債でも、10年債として発行直後のものは、証券取引業者の在庫として市場に大量に存在し、その潜在的な売りは、投資家の潜在的な買いと均衡して、活発な売買がなされているので、流動性が高くなる。それに対して、10年前に20年債として発行されたものは、その多くが投資家の長期保有の対象となっているために、敢えて売買しようとすれば、価格変動率が大きくなり、取引費用が増加する。
時価総額の小さく浮動株が少ない株式が典型だが、流通量が少なくて流動性の低い投資対象は、売る立場からいえば、取引費用の大きさが損失になるが、買う立場からいえば、取引費用の大きさは利益になる。つまり、流動性の低いものは、一般に、割安に放置されやすいので、投資においては、流動性は付加価値源泉にもなり得るのである。
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森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行