カナダ南部からアメリカ北端に住む「クリー族」や「オジブワ族」などの先住民族、通称“インディアン”たちの間では「ウェンディゴ」と呼ばれる精霊がいると伝えられている。ウェンディゴは「冬の魔物」とも呼ばれ、人に姿を見せないものの、背後に忍び寄ってハッキリとは聞きとれない声で囁くそうだ。しかし、人に危害は加えることはないという。
このウェンディゴを信じるインディアンたちは、“ウェンディゴ症候群”と呼ばれる精神病を発症する可能性がある。この病気を発症すると、気分の落ち込みや食欲の低下といった初期症状が見られ、その後、ウェンディゴに取り憑かれたと思い込むようになり、「このままでは自分がウェンディゴになってしまう」という恐怖と不安に襲われる。そして、次第に周りの人が食べ物に見えるようになり、猛烈に人肉を欲するようになるといわれている。
そしてウェンディゴに取り憑かれたインディアンは、最悪の場合、部族から処刑されるか完全にウェンディゴになる前に自ら命を絶ってしまう。では、ウェンディゴ症候群の原因とは何か?
■ウェンディゴ症候群の原因は?
発症が食料の乏しい冬期に集中していることから、ウェンディゴ症候群に陥る原因は、ビタミンCなどの栄養不足では? といった説が有力だ。栄養不足による精神疾患は世界中で見られるにもかかわらず、ウェンディゴ症候群は特定の地域にしか見られないため、とある地域の民族、文化環境などが要因である“文化依存症候群”に属する精神疾患と考えられている。
文化的背景によって発症し、共食いを引き起こすウェンディゴ症候群の存在そのものに懐疑的な声があるのも事実だ。しかし、世の中には自らのペニスが無くなってしまうような錯覚を引き起こす“性器収縮症候群”といった伝染症の幻覚精神障害もある。ちなみに、このウェンディゴ症候群は、旅人にも発症の危険性があるとのことなので注意が必要だ。
(文=山下史郎)
提供元・TOCANA
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