一方、容疑者の出身国オーストリア側はミュンヘン警察側の連絡を受け、容疑者の自宅などを家宅捜査した。オーストリア内務省側の発表によると、容疑者の父親が息子の精神的異常に気付いていたという。オーストリア当局は、「犯行に共犯者がいるという証拠は現在のところない」とし、男の単独犯行と見ている。

オーストリア国営放送のニュースサイトによると、「容疑者は昨年春まで電気工学を専門とする高等学校に通い、優秀で知的な生徒と見なされていた。家族は旧ユーゴスラビアの紛争を受けてオーストリアに移住し、ザルツブルクの地元社会に非常によく統合していたが、パンデミック中、男は孤立し、学校ではからかいやいじめに遭っていた」という。

容疑者はザルツブルク地方行政当局によって2028年までの武器禁止令を受けており、銃を購入することは許されていなかった。昨年、ザルツブルク検察は男に対してテロリスト組織に関与した疑い(刑法第278条b)で捜査を行っている。捜査対象となった事実は、2021年から2023年の間、男は同級生に対して危険な脅迫を行い、それが身体的暴行に発展し、さらに爆弾の作り方に関心を持っていたという。また、彼はテロ組織に関与していたとされ、オンラインゲームでイスラム主義の暴力シーンを再現し、そのビデオを制作していたという。ただし、ザルツブルク検察当局は2023年4月、テロ関連の捜査を終了している。

なお、テロ専門家は男が犯行日に選んだ日が9月5日だったことに注目している。9月5日は1972年のミュンヘンオリンピックでイスラエル選手団に対する襲撃事件が起きた日であり、今年52年目だ。

1972年9月5日、パレスチナ武装組織「黒い9月」の8人のテロリストは警備の手薄いミュンヘンの五輪選手村に侵入し、イスラエル選手団を襲撃。2人を殺害し、9人を人質にした。テログループは犯行声明を発表し、イスラエルに収監されているパレスチナ人のほか、日本赤軍の岡本公三やドイツ国内で収監中のドイツ赤軍幹部など234人を解放するよう要求した。