11月の米大統領選は、民主党候補のハリス副大統領と、共和党候補のトランプ前大統領との接戦が続く。結果は円相場や株価に影響を与えるだけに、日本の市場関係者も固唾をのんで情勢を見守る。先行き不確実性は高いが、どちらが勝っても米国の財政赤字拡大や物価上昇に働き、長い目で円安・ドル高要因との指摘は多い。また、トランプ氏が返り咲いた場合の混乱への懸念も強い。
ハリス氏はバイデン政権の政策を基本的に引き継ぐとみられるが、中間層へのより手厚い支援は景気を刺激する可能性がある。トランプ氏が勝てば大きな政策転換は必至。同氏が主張する輸入関税の大幅引き上げは、米国内の製品価格への転嫁を通じてインフレを再燃させかねない。
不法移民の強制送還も労働力供給を絞り、賃金の上昇圧力となる。米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ鎮圧へ利上げ再開を迫られるリスクをはらむ。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「トランプ氏の政策を意識すると、円安・ドル高の流れに傾く」と予想する。
両陣営の政策の違いが際立つのは税制だ。ハリス氏は法人税率を現行の21%から28%に引き上げる一方、子育て世帯の税額控除拡充を提唱。トランプ氏は富裕層を含む所得税の大型減税延長と法人税の追加減税を目指す。「どちらが政権を握っても財政拡張方向は変わりなく、(円安要因となる)米長期金利の上昇を招きやすい」(SMBC日興証券の尾畠未輝米国担当シニアエコノミスト)との声が上がる。
株式市場への影響を巡っては、円安方向の圧力が強まっても「日本の輸出企業の業績が改善し、東京株が上昇する」というこれまでの方程式が崩れる可能性がある。
みずほリサーチ&テクノロジーズの安井明彦調査部長は、FRBの利下げが当初は円高・ドル安を後押しすると指摘した上で、米国第一主義のトランプ氏の下では、仮に円安が進んでも「米国に現地法人を構えて稼ぐ企業の収益にはプラスになる一方、国内でモノを生産し、米国に輸出して稼ぐタイプの企業には逆風」との見方を示した。
一方、明治安田総合研究所の小玉祐一チーフエコノミストは「(トランプ氏復帰なら)政策を予測できず、先行き不透明感につながるリスクは在任中ずっとくすぶり続ける」と警戒する。両候補が掲げる政策の実現性は上下両院で与党が多数派を握れるかにも左右され、予断を許さない。 (了)
提供元・Business Journal
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