最近、ロペス氏ら研究チームは、その答えを見つけるため、イベリア半島やビスケー湾(イベリア半島の北義肢からフランス西岸に面する湾)における2020~2023年のシャチの発生記録を調査し、シャチたちの行動の理由を分析しました。

シャチの目撃記録は、上記の期間で、合計597件も集まりました。

そして、その記録のうち47%で、シャチがボートやヨットに接触していたことが分かりました。

シャチは好物のマグロを追って移動し、チームプレーで狩りを行う

研究チームは、シャチの発生記録を元に、シャチの移動に関するコンピュータモデルを作成。

これにより、「シャチ」とシャチの獲物である「タイセイヨウクロマグロ(学名:Thunnus thynnus)」の季節ごとの居場所が同じだと分かりました。

つまり、シャチとマグロの移動は一致しており、マグロの居場所が分かればシャチの居場所も分かることになります。

ロペス氏によると、シャチは様々な獲物を食べることができますが、群れごとに異なる獲物を好むのだとか。

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シャチたちはチームプレイでマグロの群れから1匹だけを引き離す / Credit:Canva

そしてイベリア半島付近のシャチたちは、このタイセイヨウクロマグロが大好きで、彼らを好んで狩るようです。

ただし、海の王者であるシャチでも、マグロを狩るのは簡単ではありません。

タイセイヨウクロマグロの成魚は、数メートル・数百キロの巨体であり、大きな群れを成して泳いでいます。

しかも彼らは海で最も速い魚の1つであるため、シャチたちはマグロを狩るために互いに協力しなければいけません。

シャチたちは狙いを定めた1匹のマグロに襲い掛かって体当たりし、まず群れから引き離します。

ロペス氏によると、1頭のシャチがマグロに襲い掛かった後、さらにもう1頭のシャチが追撃の形で襲い掛かることもある」そうです。

そのようにして何とかマグロを孤立させると、マグロを疲れさせてから、捕まえやすい浅瀬へと追いやります。