「老後資金を3,000万円準備して余裕と思っていたのに…」

老後に向けてコツコツと貯金して、退職金も貯め込んで、「まとまった資産を作れた」と安心し、無計画に使うと身を持ち崩す原因になります。

今回は、無計画なお金の使い方をして、老後に思わぬトラブルに見舞われたケースをいくつか紹介します。「自分は大丈夫でしょ」と思っている人も、気を引き締めるためにぜひご一読ください。

退職時には3,000万円あった貯金が……

「退職時には貯金3,000万円だったのに…すっからかん」

1つ目のエピソードは、老後に大金が舞い込んできて舞い上がってしまったご夫婦の話です。

Mさんご夫妻は、現在年金暮らしをしていますが、ご主人が大手メーカーに勤務していたことから約2,100万円という比較的高額な退職金を受け取りました。

さらに、子どもの結婚・独立をうけて、それまでかけていた生命保険を思いきって解約し、解約返戻金として700万円が入ってきたので、預金残高が一気に3,000万円を超えたのです。

問題はここからです。 余裕を持った暮らしができるのだから、少しぐらい贅沢しても… ということで、海外旅行や豪華クルージングに頻繁に出かけだしたのです。

しかし、明らかに様子がおかしいことに気付いた息子さんが不安に思い確認したところ、貯金がものすごい勢いでなくなっていることがわかりました。

子どもの教育費にお金をかけすぎた晩婚夫婦の末路

「晩婚で授かった大事な子ども。将来のためならいくらでもお金をかけられると思ったが、教育費がこんなに膨れ上がるなんて…」

会社員のDさん(43歳)は、37歳の時に2歳年上の女性と結婚し、1年後に子どもを授かりました。子どもを、小学校から大学までエスカレーター式の私立に通わせたいという強い希望を抱いていました。しかし、Dさん一家の貯蓄は約400万円。住宅ローン返済もあり、年間100万円かかる私立に通わせるのは厳しい経済状況だったのです。

それでも「わが子のため」 と必死の思いで私立学校に通わせることにしたDさん一家でしたが、新たな問題が発生しました。

私立学校に通わせることの経済的な負担は、学費だけではないことに、Dさんは気付かなかったのです。

年間100万円という高額な学費に加え、学校行事や部活動などの活動費が50万円以上発生するとのこと。当初の想定を大きく上回る出費に、Dさん一家は貯蓄どころか、家計が苦しくなっていました。

子どもにできるだけ良い教育を受けさせたいと思うのは、親にとっては至極当然のことです。ただし、お金のかかる学校に行かせることだけが良い教育を受けさせることではありません。 老後の費用を食いつぶさない範囲で、子どもに合った教育とは何か考えてみましょう。

住宅ローンの完済は79歳!?

「結局、貯金ができないのは収入が少ないからでしょ?」と思うかもしれませんが、収入が多くても支出が多ければ貯金がしづらいのも事実です。Fさんご夫婦は共働きで、お嬢さまと愛犬の3人+1匹暮らしです。ご主人が40歳、奥様が37歳の頃、奥様が再就職をして収入が増えたのをきっかけに、44歳で念願のマイホームを手にしました。

共働きで収入も多く、ご主人のご両親から500万円の援助があったので、4,000万円の新築マンションを79歳完済の35年ローンを組んで購入することにしたそうです。「フラット35」Sを利用し、79歳までの月々の支払額は、駐車場、管理費、修繕積立費を含めて、当初5年間は15万円、6~35年目は15.5万円になりました。

それまで住んでいた賃貸マンションの家賃が共益費・駐車場代込みで約15万円程度だったので、払えると思っていたそうです。

ところが、ローンを組んだのち、奥さんがガンを患う、購入時に気付かなかった浴槽の天井の水漏れなど、思わぬ費用が発生し…。

いざというときのお金を用意していなかったことに気づきました。

当初は無理なく返済できる計画だったはずなのに、いつの間にか家計を圧迫するようになっていました。定年が少しずつ近づいてきた頃、79歳完済で組んだ住宅ローンの返済が重荷になってきたのです。

老後に陥りやすいお金の失敗とは

ここで紹介したのはほんの一例ですが、現役時代には安定した収入があり生活に困っていなかったのに、老後に入って以下のようなお金の失敗をおかす人はたくさんいます。

● 生活レベルを落とせず現役時代から金銭感覚が変わらない
● 資産運用を持ち掛けられて鵜呑みにして取り組んだら大失敗した
● 子どもや孫にお金を使いすぎてしまい自分たちの老後資金がなくなった
● 家族が病気・けがで高額の治療費が必要になった

病気やけがは致し方ない部分がありますが、それ以外の失敗に関しては、計画的なお金の使い方をすれば防げる可能性があるのでしっかりと意識しましょう。

人生100年時代の老後計画

老後の人生は思っているよりも長いものです。人生100年時代の老後生活に向けて、お金で失敗しないためにしっかりと準備を進めておきましょう。

文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。

(2024年05月16日公開記事)