今やオワコンと化した「老後破産」。
しかし、老後資金不足の問題が解決されたわけではありません。
どのような老後生活を送れるのかは、今の行動にかかっています。
今回は、日本FP協会の講師として活躍してきた筆者が、豊かな老後生活を送るために「してはいけない」行動を紹介します。
NG行為1:ライフプランを立てずに過ごす
老後破産を招く要因の一つに、ライフプランを立てていないことが挙げられます。
ライフプランとは、人生における将来の目標やライフイベントを具体的に計画し、その実現のために必要な資金や行動を明確にしたものです。
老後に必要な金額の試算をせずに、行き当たりばったりのお金の使い方をするのは危険です。まず、老後いくら年金を受給できるのか、を調べます。
次に老後、必要な生活費を見積もりましょう。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、「旅行やレジャー」「日常生活費の充実」、「趣味や教養」に費やすお金を含む「ゆとりある老後生活費」の平均額は37.9万円とのことでした。
年金で生活費をカバーできればいいですが、できない場合は不足分を現役時代に貯めておく必要があります。老後になってから収入を得るのは難しいので、なるべく多めに確保しておくと安心です。
NG行為2:子供が独立したのち生活レベルを爆上げする
子供が自立してから夫婦が退職するまでの期間は、老後資金を貯める最後のチャンスです。しかし、ようやく子育てが終わった解放感から、この時期に生活レベルを上げてしまう人は多いものです。
長年の育児で溜まった疲れを癒し、つい趣味や旅行などにお金を使ってしまう気持ちはよくわかります。しかし、退職前に上げた生活水準は、退職後も簡単には下げられません。
老後の生活を安心して楽しむためには、今この瞬間が最後の貯蓄チャンスだと認識し、計画的に資金を積み立てていくことが重要です。
具体的な方法としては、以下のようなことが挙げられます。
● 家計簿をつけ、無駄遣いを減らす
● ボーナスや臨時収入を老後資金に回す
● 住宅ローンや教育費などの借金を早めに完済する
● iDeCoやNISAなどの制度を活用する
● 必要に応じて、ファイナンシャルプランナーに相談する
老後資金は、早ければ早いほど有利に貯めることができます。
子供たちの巣立ちという節目を、老後資金ラストスパートの合図と捉え、将来への不安を解消できるよう、今からコツコツと準備を進めていきましょう。
NG行為3:定年後までの住宅ローンを組む
マイホームは夢の象徴。しかし、老後も住宅ローンの返済に追われる生活は、夢の終わりを告げる悪夢になりかねません。
老後に破産しやすい理由の一つは、定年後も住宅ローンを抱えていることです。理論上、定年後も住宅ローンを組むことは可能ですが、現実には望ましくありません。定年後は収入が減り、健康問題や子どもの結婚・出産などで予想外の出費が増える可能性があるからです。
そのため、定年後も返済が続く場合は、繰上返済や退職金での一括返済を検討しましょう。返済額を減らすことで、老後の経済的負担を軽減できます。 住宅ローン返済で悩んでいる方は、早めに金融機関に相談し、自分に合った方法を検討しましょう。
老後破産を防ぐには?
老後の資金計画は早ければ早いほど安心です。現役世代であれば、収入や健康状態もある程度安定しており、老後の生活設計も立てやすい時期と言えます。まずは、具体的な年金額と想定される支出を算出し、シミュレーションしてみましょう。
文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。
(2024年07月10日公開記事)