現代では、クレジットカードを持っている人が大半だろう。しかし「大きな買い物以外はなるべく現金で」という人も多いのではないだろうか。しかし、金融工学から考えると、クレジットカードを使う方が実は有利である。今回はそのカラクリについて解説する。

クレジットカードの仕組み

クレジットカードは、①カード発行会社、②カード加盟店、③カード利用者の3者間の取引となる。具体的な取引としては、カード利用者がカード加盟店にカードを呈示することで代金を支払わずに商品を購入することができる。その後、カード会社がカード加盟店に対して立て替え払いをし、カード代金として後日カード利用者に請求する。カード利用者がカード会社に代金を支払うと全ての決済が完了するという仕組みだ。

そもそもクレジットカードはなぜ存在するのかと言えば、それぞれの当事者にメリットがあるからだ。カード発行会社は、カード加盟店から手数料を受け取れるというメリットがある。カード利用者は、手元に現金がない場合でも欲しいと思った時にカードを利用することによって、商品やサービスを受けられるというメリットがある。カード加盟店は、お金がないからと本来なら買ってもらえない潜在顧客をカードの利用によって、売上につなげることができるというメリットがある。

現在価値と将来価値

金融工学ではクレジットカードを使う方が有利になると述べた。その理由はクレジットカードを使うことで、資金を有効に使うことができるからだ。金融工学の考え方に「現在価値」と「将来価値」という概念がある。もし、100万円を「今すぐ」か「1年後」かを選択して貰えるとしたら、どちらを選ぶだろか。

普通の人ならば「今すぐ」貰うはずだ。それは、1年後のことはどうなっているか分からないし、早くお金を手に入れた方が、今欲しいモノを買ったり、運用してお金を増やしたりすることができるからだ。つまり「今の100万円」と「1年後の100万円」では額面は同じでも価値が違うのだ。今の価値を表すのが「現在価値」、1年後の価値を表すのが「将来価値」になる。

仮に年利が1%だとすると、100万円は1年後に「100万円×1%=1万円」の利息がつくので、将来価値は101万円ということになる。今すぐもらう100万円と、1年後にもらう101万円は、理論的には同じ価値のはずだ。

現在価値と将来価値の差をフリーランチ

時間軸を短くしても考え方は同じだ。例えば1ヶ月後の100万円は「1万円÷12ヶ月=約833円」の利息がつくので、1ヶ月後の将来価値は約100万833円だ(便宜上、簡素な計算をしている)。クレジットカード払いは、約1ヶ月遅れて代金を支払うケースが多いのではないだろうか。

仮に100万円の時計を買って1ヶ月後に代金が引き落とされる場合、この833円をフリーランチできると言える。時計を買ってもすぐに100万円を支払うわけではなく、1ヶ月後の引き落としまで100万円は金利1%の銀行に眠ったままだ。時計は既に手元にあるのに、支払い代金100万円の1ヶ月分の金利を受け取ることができる。もちろん、現金払いした場合は、この金利を受け取ることはできない。

その他のメリット

時間価値以外にもクレジットカードの利用には次のようなメリットがある。

(1)ポイントが貯まる

現金払いと異なり、カード払いにはクレジットカードのポイントが付き、ポイントを使って代金決済や商品と交換できる(購入店のポイントカードはまた別の話)。

(2)取引履歴が残る

カードを利用した場合、取引履歴が記録されるので、後で何に使ったか確認できる。また、長期間滞納なく取引を続けると信用力が増し、ローンを組む場合などで有利になることがある。

(3)補償がある

現金で旅行に行ったり、買い物をしても何の補償も付かないが、カードを利用すると海外旅行保険が付帯したり、買った商品が壊れたり盗難に遭った場合に補償されるショッピングプロテクションが付いていたりする。

(4)手数料が掛からない

ネット通販などで代金を支払う場合、クレジットカードは手数料が無料であるが、振り込み、代引き、コンビニ決済の場合には手数料が掛かるケースがある。

このように、クレジットカードを利用することは多くのメリットがある。ただ、「分割払い」や「リボ払い」の場合には、利子が発生するので、時間価値のメリットが受けられない。クレジットカードを使う場合には、計画的かつ1回払いにすることがポイントだ。また、入会費や年間手数料がどれくらいかかるのかもチェックしよう。

文・MONEY TIMES 編集部

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