力道山と言えば、日本プロレスの父とも称される元プロレスラーとして活躍した人物だ。アントニオ猪木やジャイアント馬場などの後進を育成し、また最強と謳われた木村政彦との「昭和の巌流島」と称される伝説の勝負を行なうなど、数々の伝説を残した。
1963年12月8日、遊興中の赤坂のナイトクラブ「ニューラテンクォーター」にて暴力団員であった村田勝志という人物と口論となった力道山が、相手から左脇腹を登山ナイフで刺されるという刃傷事件が発生した。自分の方から因縁をつけたという理由から警察沙汰にはせず、応急処置を受けて帰宅をしたものの、翌日に体調が悪化し、山王病院にて手術を受けることとなった。術後、経過が悪化し腸閉塞に陥った力道山は、12月15日に再び手術を受けたものの容態が回復することは無く、39歳という若さでこの世を去ることとなってしまった。
力道山の死因は、穿孔(せんこう)性化膿性腹膜炎と公表されている。だが、力道山の死については現在においても疑問視がなされており、本当の死因は違っていたのではないかとの説がいくつも存在している。
代表的な例を挙げると、まず医療ミス説というものがある。元々、腹部を刺されても応急処置で済ませて帰宅したという彼の傷については、わずかに血痕がついただけで流血というほどのものではなく、思いのほか軽傷だったという証言があるという。
力道山の敬子夫人は、刺傷については偶然の出来事であるとするも手術には納得をしていないとし、医療ミスではないのかと疑っているという。彼女によれば、医者に尋ねたところ麻酔が効かなかったために通常より2倍の麻酔を使用していたのだという。だが、それによって筋肉が麻痺して呼吸困難に陥り、さらに気道確保のために気管内挿管を試みたものの失敗してしまい、そのまま窒息死してしまったというのである。
この説は力道山の本当の死因として最も有力視されているものとなっている。なお、力道山を刺した人物の裁判で提出されたカルテには麻酔に関するものがなく、紛失を理由に最後まで出されることはなかったという。
他にも異説がある。2度目の手術の前に、それまで食事制限がなされていた力道山が空腹に耐えられず付き人に命じて寿司と酒を用意させて暴飲暴食をし、それによって容態が急変してしまったのではないかという噂もあったという。
実際、力道山の見舞いに訪れた人々が、コーラやサイダーを飲んでいる彼の姿をたびたび見ていたということもあったとされている。また、この説はプロレスラーとしての豪快エピソードの一つとして語られる場合もある。だが、当時は夫人や看護師が昼夜交代で付き添っていたということもあり、決して暴飲暴食ができるようなタイミングは無かったとされている。夫人のそうした否定の証言もあるため、この説は一般に支持されていない。
この他、力道山が在日朝鮮人であったという出自にまつわるものとして、影響力の強い力道山が南北朝鮮どちらを支持するかが情勢に大きく関わることを危惧した者によって暗殺された、刺客が潜入し彼にとどめを刺したといった陰謀論めいた説もあるという。
いずれにせよ、彼の好戦的な性格が災いしての顛末となってしまった。彼の最期の言葉は、手術前に敬子夫人が聞いた「オレは死にたくない」というものであったという。
文＝黒蠍けいすけ（ミステリーニュースステーションATLAS編集部）
提供元・TOCANA
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