7月の既存店売上の伸び率がコンビニエンスストア業界大手3社のなかで唯一、前年同月比マイナスに陥るなど異変が生じているセブン-イレブン。コンビニチェーンなかでも割高な価格設定で知られていたが、危機感からか、今月3日には手頃な価格の「うれしい値!」商品を拡充して9月末までに270アイテムを展開すると発表。SNS上では「セブンが突然、安くなった」「値上げしまくったら成長鈍化したので値下げ」などと話題を呼んでいる。

 原材料価格・エネルギーコストの上昇を受けて近年、小売・飲食業界で値上げが続くなか、コンビニ業界も例外ではない。なかでもセブン-イレブンは消費者の間でも「高価格」「サイズが小さめ」というイメージが浸透。「おにぎり」は100円台後半~200円台のものが主流となり、弁当類も600円台のものも珍しくなくなった。

「セブンのPB(プライベートブランド)の総菜類やパン、スイーツなどは、ローソンやファミリーマートと比較して明らかにサイズが小さなものが目立ち、お得感が低い。それでも高いクオリティというイメージに惹かれて買う客は多かったため、セブンは強気の価格を維持してきた。だが、さすがに消費者の限界を超えて既存店の売上が落ち始めたことを受け、路線転換を図っているということだろう。もっとも、セブンとしては“どこまで上げても客がついてこれるか”という上限を探っていた感もあり、だからこそ既存店売上が前年同月比マイナスに転じるやいなや、すかさず低価格帯の商品を大量に投下できるのだろう。そういう“したたかさ”は、さすがセブンといえる」(大手コンビニチェーン関係者)

低価格帯と高価格帯の両方に注力

 変調はすでに現れていた。セブン&アイ・ホールディングス(HD)の24年3~5月期決算では、国内コンビニエンスストア事業の営業利益が前年同期比4%減に沈んだ。3月の既存店売上高は25カ月ぶりに前年同月比マイナスとなっていた。これが影響してか、セブンは少し前から徐々に割安な商品のラインナップを拡充させてきた。たとえば7月には、従来からある「味付海苔 炭火焼熟成紅しゃけ」(税込189円)の販売を継続する一方、「手巻おにぎり しゃけ」(138.24円)を発売。税抜価格は128円で120円台に抑えた。このほか、「手巻おにぎり ツナマヨネーズ」を138.24円で発売したが、従来151.20円で販売していた同名商品からの切り替えとなるため、事実上の値下げとなっていた。

「セブンは試験的に『おにぎり』の実質値下げを行い、その効果を検証しようとしていた。そして、おにぎり全体の販売数が1割も増えたということで、この結果を受けて割安な商品のラインアップを大きく拡充していく戦略に舵を切ったと思われる。

 注目すべきは、『うれしい値!』の対象商品として、同じセブン&アイHD傘下のイトーヨーカ堂をはじめとするスーパーマーケット業態で扱っている低価格PB『セブン・ザ・プライス』を投入する点だ。ヨーカ堂は単体では4期連続赤字が続き低迷中だが、スーパー事業には生鮮食品や低価格商品開発のノウハウがあり、こうした強みをコンビニのセブンにも積極的に投下してくれば、ローソンやファミマにとっては大きな脅威となる。高価格で高クオリティを訴求する『セブンプレミアム ゴールド』は引き続き扱うようなので、低価格帯と高価格帯の両方に注力する2方面戦略を取るセブンの今後が注目される」(大手コンビニチェーン関係者)

 セブンは「うれしい値!」商品として、従来の「五目炒飯」「麻婆丼」「バターチキンカレー」をリニューアルするかたちで3日、348.84円で発売。また、牛乳やポテトサラダなどPB「セブンプレミアム」の一部商品も「うれしい値!」商品として扱う。このほか、今月3日には、一部地域で2017年に撤退したレジ横でのドーナツ販売を7年ぶりに復活させ、店内で調理した揚げたてドーナツを発売した。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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