2003年4月、北海道むかわ町穂別地区で、完全な状態の尾椎骨の化石が発見されました。白亜紀の穂別地区は海の底だったため、最初は「首長竜の化石ではないか」と考えられていましたが、調査の結果、日本古生物学史上最大級の恐竜全身骨格化石であることが判明しました。

学会が震撼した「カムイサウルス(正式な学名はカムイサウルス・ジャポニクス)」に会いに、むかわ町穂別博物館を訪れました。

目次

  1. 誰も気づかなかった「世紀の大発見」
  2. ついに宝の箱が空けられた!
  3. おむすびころりん、すってんてん
  4. あなたの部屋にカムイサウルスを!?

誰も気づかなかった「世紀の大発見」

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

化石が発見された「穂別地区」は、かつて独立した自治体でした。2006年3月27日に鵡川町と合併し、新町名「むかわ町」に統合されました。シシャモで有名な旧鵡川地区と異なり、同地区は日高山脈を有する内陸部です。

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

北海道には蝦夷層群と呼ばれる白亜紀で堆積した古い地層が分布しています。穂別地区もその中の一つで、これまでもアンモナイトなど古代海洋生物の化石が数多く発見されています。

2003年4月に町内の化石収集家である堀田良幸氏は、林道近くの沢に面した斜面に大きな尾椎骨の化石を見つけました。

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

穂別地区では、これまで多くの海生爬虫類の化石が発掘されていたため、堀田氏が発見した化石も首長竜のものと思われていました。そのためスポットが当たることなく、ひっそりと穂別博物館に保管されていました。

ついに宝の箱が空けられた!

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

2010年に「フタバスズキリュウ」を研究した東京学芸大学の佐藤たまき准教授(当時)が来館し、穂別博物館が収蔵する首長竜の化石を確認していたところ、その中に異質な化石が混じっていることに気づきました。

クリーニング作業を行ってみると首長竜とは別の種類であることが判明。2011年に北海道大学総合博物館の小林快次准教授(当時)によって恐竜であることが確認されました。

2013年にむかわ町は本格的な発掘作業を開始。全長8mの全身骨格が回収されました。

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

穂別で発見された恐竜の化石は、ハドロサウルス科に属すると考えられています。ハドロサウルス科は中生代白亜紀(約1億4550万〜6600万年前)に世界各地で繁栄していた植物食恐竜です。通称「むかわ竜」と呼ばれていた恐竜の化石には、「カムイサウルス」の学名が付けられました。

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

国内での恐竜の全身骨格の発見は、福井県で発見されたフクイベナートル(2007年発掘)に次いで2例目となります。フクイベナートルが全長約2.5mの小型獣脚類であるのに対し、カムイサウルスは全長約8m。恐竜としては中程度の大きさです。

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

穂別博物館には以前から首長竜の化石が展示されており、「恐竜博物館」と呼ばれることもありましたが、恐竜とは「直立歩行をする爬虫類」を指すため、正確には首長竜は恐竜ではありません。

「映画ドラえもん のび太の恐竜」のモデルはフタバスズキリュウなので、この理論に当てはめるとタイトルは「のび太の首長竜」になります。

おむすびころりん、すってんてん

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

海底だった穂別の地層からなぜ陸上の恐竜の化石が発見されたのか。こんな場違いな場所でなければ、もっと早く世紀の大発見が発表されていたはずです。

当時の北海道は東西の陸地に分かれ、その間に海がありました。穂別を始め、三笠、滝川、足寄などの内陸部でアンモナイトやカイギュウの化石が発見されるのはそのためです。

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

カムイサウルスは、ユーラシア大陸の沿岸部に生息していた恐竜が何らかの理由でスッテンコロリンと海に落っこちたと考えられます。その後、東西の陸地がぶつかり合って北海道が形成されると、海底が隆起して日高山脈が誕生しました。

「その光景を見たんか?」という突っ込みはナンセンス。考古学はロマンです。目を閉じて白亜紀に思いを馳せてください。

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

むかわ町は、2021年3月に660万円の事業費を投じ、実物の約五分の一程度の大きさである、全長155cm高さ65mのミニレプリカを作成しました。

展示スペースの関係でしっぽが取り去られています。分解や組み立ておよび持ち運びが従来の実物大レプリカと比べ容易であることから、教育活動やイベントでの利用が見込まれています。

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

途方もない時間を超えて現代に姿を現したカムイサウルス。これまでに見られない特徴があることから、2019年に新属新種として発表されました。さらなる研究によって恐竜の進化と多様性に関する理解が深まるでしょう。

あなたの部屋にカムイサウルスを!?

【北海道】世紀の大発見!カムイサウルスに会いに行こう「むかわ町穂別博物館」
(画像=『たびこふれ』より 引用)

むかわ町は前のめりでカムイサウルスを推しています。イチオシは小林快次さん監修のぬいぐるみ。博物館内はもちろん、さまざまなイベントでも販売しています。ムカワサウルスをあなたの部屋に招いてみませんか?

むかわ町穂別博物館

所在地:北海道むかわ町穂別80番地6
電話:0145-45-3141
入館料:小学生から高校生100円(10人以上50円)大人300円(10人以上200円)※小学生未満は無料
開館時間:9時30分~17時00分 (最終入館 16時30分)
休館日:月曜日・祝日の翌日・年末年始

文・写真・吉田匡和/提供元・たびこふれ

【関連記事】
避暑地アッター湖で、クリムトセンターと「クリムトの庭園」を訪ねる
ベルリン郊外に残るベルリンの壁跡地でハイキングやサイクリングを楽しむ
高速列車「あずま」で東海岸を行く、ロンドンーエディンバラ間鉄道の旅
【北海道】異国情緒溢れる街・小樽に行ったら、たくさんの笑顔に溢れていた。
ハワイ・ハレイワタウンでランチをするなら?食べたい内容別のおすすめ5店を紹介