Unruh Civil Rights Act

そうはいっても、女性限定割引が法律で定められる「差別」に該当するかは議論があるのでは?と考える読者も多いだろう。しかし、その点も判例で明確化されている。

Koire v. Metro Car Wash(1985)を紹介したい。

この事件において、原告である男性は、「レディースデー」に洗車場やナイトクラブに訪れ、女性割引の恩恵を受けられなかったことを理由に、Unruh公民権法違反だとして事業者を訴えた。

事業者の主張は、性別に基づく価格割引は法律に定められる差別には当たらないとするものである。しかし、裁判所は性別による価格差は、有害な固定観念を強化するため、一般的には男性と女性の両方に悪影響を及ぼす可能性がある、と厳しい指摘を行った。被告が差別的な意図を持って割引を行ったかどうかは関係なく、性別による価格差が有害な固定観念を強化する性格を帯びている以上、許容されないとも釘をさしている。

さらに、ナイトクラブは、女性の収入が男性より低い傾向があるために行った「救済措置」であるとの正当化も行ったが、裁判所は、経営上の利益のために行った割引行為に過ぎないと判断し、また、Marina Point, Ltd. v. Wolfson において示された「『経営上の利益のため』は差別を正当化する理由にならない」との判決を引用することで、私企業の販促行為だから違法ではないという事業者の主張も退けた。

代表的な州であるカリフォルニア州の事例を紹介したものの、ニューヨーク州や、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州などにおいても、性別を理由とした価格差を禁止する同様の規定が見られる。

グローバルコンプライアンスに反する可能性

さて、話を日本に戻そう。牛角は「食べ放題での注文量が、女性は男性に比べて肉4皿分少ないといった背景からスタートした」と企画の背景を述べているが、経営上の利益は差別を正当化する理由にはならない。アメリカの事例に当てはめれば、「差別」であるといえるだろう。