「え?持ち家ってこんな費用がかかるの?」
持ち家の費用は物件価格だけではない。例えば、固定資産税など「持っていること」で発生する意外な費用を見落としている人もいるようだ。他にも持ち家ならではの特殊な事情があるので、そのあたりをよく考えずに購入してしまうと「こんなはずじゃなかった」と落ち込むかもしれない。
ここでは、気をつけたい持ち家の落とし穴を4つ紹介する。持ち家と賃貸それぞれに向いているケースも併せて確認しよう。
持ち家の意外な落とし穴4つ
多額の費用がかかる
言うまでもないことだが、持ち家を所有するためには多額の費用がかかる。例えば、東京で家族と暮らすために3LDKのマンションを購入する場合、築年数や立地にもよるが、1億円を突破してしまうことも十分にあり得るだろう。
購入時に一括で払える財力があるならともかく、ほとんどの人は住宅ローンを組んで買うことになるはずだ。そして、住宅ローンは借金である以上、返済する必要があるうえに、利息も発生する。 さらに、あまり考えたくないことだが、自分や家族の病気、勤務先の倒産などにより払えなくなる事態が起きる可能性もゼロではない。
維持費がかかる
持ち家には、維持費が発生する。
具体的には固定資産税や火災保険の保険料、修繕積立金、マンションであれば管理費や駐車場代が挙げられる。
修繕積立金は強制ではない。しかし、建物を維持するためには10~15年間隔でメンテナンスが必要だ。 この費用は自分で貯蓄しておく必要がある。また、賃貸物件であれば、給湯器が壊れた、水道の調子がおかしいなど、部屋の設備にかかる修理代は一部の例外を除き、大家が負担してくれる。しかし、持ち家であればこのような修理代は自分で負担しなくてはいけない。
資産価値が落ちる可能性
不動産市場は常に変動しており、購入時よりも土地の価格が下落する可能性がある。
建物の資産価値も、老朽化により下落していくのは避けられない。あまり考えたくない話だが、地震や豪雨などの災害が起きれば、資産価値がさらに急落することにも気を付けてほしい。
容易に引っ越しができない
持ち家にすることで転勤などがあった場合にも、容易に引っ越しができなくなる。 売却はできるが、希望価格で売却するためには時間がかかるケースもある。特に転勤が多い会社に勤めている場合には、デメリットに感じるだろう。
持ち家のメリットは?
持ち家には以下のように多くのメリットもある。
● 将来的な資産の形成
● 住まいが安定する
● 増改築やリフォームを自由にできる
● 税金の控除
● 団体信用生命保険に加入できる
「持ち家には資産になる」とはよく言われることである。それ以外にも、家賃値上げの心配がなく安定した住まいを手に入れることができるうえ、増改築やリフォームも思いのままにできる。また、住宅ローン控除や固定資産税の減免措置を受けられる可能性があるため、支出を抑えられるなどのメリットもある。
団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んでいる契約者が亡くなった場合に、残債が完済される保険のこと。つまり、「残された家族が住宅ローンを支払い続けなければならない」 という不安は基本的にない。
持ち家に向いている人・賃貸に向いている人
持ち家か賃貸かは永遠のテーマと言っていいだろう。結論からいうと「その人次第」と言ったところだ。そこでここでは「持ち家に向いている人」と「賃貸に向いている人」の特徴について考えてみよう。
まず、持ち家に向いている人の特徴は以下の通りだ。
● 定年(65歳前後)時点で住宅ローンを完済できる見込みが高い
● 上場企業の正社員、公務員、高度専門職など収入が安定している
● 十分な貯蓄があり、頭金としてある程度まとまった金額を出せる
● 購入時点では健康状態に特段不安がない
● 生涯独身の可能性があり、老後に住む家を確保したい
● 転居を伴う転勤がない(もしくは単身赴任も可能)
● 「こういう家に住みたい、インテリアはこうしたい」など住環境にこだわりがある
一方、賃貸に向いている人の特徴は以下の通りだ。
● 住宅ローンであってもできれば借金をしたくない
● 転居を伴う転勤が多く、単身赴任も難しい
● 駆け出しの自営業など収入が不安定
● 健康状態に不安があり住宅ローンを組めない可能性がある
● 「便利で快適に暮らせれば十分」など、住環境、インテリアに強いこだわりはない
思い描く理想の家をかなえるほうを選択しよう
持ち家と賃貸には、それぞれさまざまなメリットとデメリットがある。
自分がどのような家に住みたいのか、どのようなライフスタイルを思い描いているかによってどちらに住むべきか変わってくるだろう。
まずは思い描く理想の家を考えてみることをおすすめする。
文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。
(2024年07月03日公開記事)