2020年のはじめ、数学の学術雑誌『Research in Number Theory』に連分数について書かれたある論文が掲載されました。

筆頭著者はChristopher Havens(クリストファー・ヘイブンズ)となっています。

彼は大学の研究者でしょうか? 優秀な大学院生でしょうか?

いいえ、彼は高校中退者で、麻薬中毒者で、仕事もなく、家庭もなく、最後は殺人まで犯してしまった人物です。

ヘイブンズは、2011年に殺人罪で25年の刑が下り、ワシントンの刑務所に現在も服役しています

ヘイブンズは刑務所の中で数への才能を開花させ、勉強を続けてついに獄中で数論の論文を書き上げ、査読付き国際ジャーナルに掲載までされたのです。

何を始めるにも遅すぎることはない、といいますが、こういう成果を聞くとなんだか希望が湧いてきます。

目次

  • 数学の先生を探しています
  • 1日10時間に及ぶ勉強
  • 社会への借りを返す

数学の先生を探しています

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ヘイブンズから届いた手紙。/Credit:the conversation

彼が見出されるきっかけになったのは、出版社に届いたヘイブンズからの手紙でした。

関係者の皆様へ、個人的に「Annals of Mathematics」を購読する方法について知りたいのですが、どうすればよいでしょうか? 私は現在、ワシントン州矯正局に25年服役していますが、この時間を使って自分を磨きたいと考えています。今は微積分と数論を勉強しています。数学雑誌の情報を送ってくれませんか? クリストファー・ヘイブンズ

また追伸としてヘイブンズは、独学ではどうしても1つの問題に長時間つまづくことが多いため、数学の相談ができる人を紹介して欲しいということも書いていました。

この手紙を同僚から見せられた「Mathematical Sciences Publishers」という数学出版社のマシュー・カーゴ氏は、イタリアのトリノ大学教授で数論を専門とする自分の父親を、このヘイブンズに紹介することにしました