そして大切な点として、①②③すべては体内でDNAの一部を破壊し、突然変異を生じさせる(つまりがんを発生させる)おそれがあります。

実際、シンハ氏によると、「①HCAと②PAHはサルを用いた2004年の実験で、③アクリルアミドはマウスを用いた2015年の実験で、それぞれ発がん性が認められました」とのこと。

ところが全体として研究者たちのスタンスは、「焦げががんの原因になるとは断言できない」というものです。

ではなぜ、焦げとがんの関係性は曖昧なままなのでしょうか?

ヒトでの発がん性は実証できていない

焦げとがんの関係性が曖昧な理由を、シンハ氏は次のように説明しています。

「焦げががんの原因になると断言するには臨床試験が必要です。

しかし発がん性が疑われる物質を使って、ヒトで実験するわけにはいきません」

しかも、これらの物質を数日間摂取したからと言って、すぐにがんになるということはないでしょう。

実際これまでに行われてきた研究も「健康な参加者を10年、20年と観察し、がんになった人と健康な人との違い(食品の調理法など)を比較する」というものでした。

いくらかの傾向は分かるかもしれません。

しかし私たちが日々の食事で摂取する焦げの量はわずかであり、その個人差が本当にどこまでがんに影響したのかをはっきりと理解することは難しいでしょう。

さらにこれまでに行われてきたヒト観察の他の研究結果もまちまちです。

「発がんのリスクはほとんどない」と結論付けたものもあれば、真逆の結論もあるのです。

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食べるなら黄金色のトーストがおすすめ / Credit:Depositphotos

では結論として、私たちは焦げた食品とどのように向き合っていけば良いのでしょうか?

シンハ氏は次のように述べています。

「焦げで作られる物質が正式に発がん性物質として指定されるにはまだ時間がかかるでしょう。

しかし、潜在的なリスクを軽減させることはできます。