【テューリンゲン州議会選】 テューリンゲン州の人口は約233万人、連邦州第12位、州都はエアフルトだ。前回の州議会選(定数90)では左翼党が第一党で同党とSPD、緑の党の3党から成るラメロウ現連立政権が発足した。
同州でもAfDが世論調査で約30%の支持を得ており、最大の政党となる見込みだ。それを追ってCDUが約22%で続いている。歴史的に強い支持を得ていた左翼党は新党のBSWの出現で大幅な支持低下に直面している。SPDと緑の党は州議会に入るための5%の壁を超えられるかどうかが不透明な状況だ。現在の左翼党、SPD、緑の党の連立政権が過半数を維持することは難しい。
両州ともAfDの躍進が予想されている。その背後には、停滞する国民経済、不法移民の増加などに対するショルツ連邦政権への不満がある。ドイツ東部でAfDが更なる躍進を続けていくならば、ドイツの政治情勢に大きな影響を与えることは必至だ。
ちなみに、東西両ドイツの再統一から30年以上が経過したが、東独と西独では依然、経済的、政治的な格差がある。特に経済的格差は大きい。例えば、東独の労働者の平均賃金は西独のそれと比較すると約85%だ。ドイツの再統一後、共産党政権下にあった東独では国有企業が崩壊し、失業率が急増した。また、産業インフラが整備され、経済水準の高い西独に若い東独国民が移住する現象が続いてきた。その結果、東独では人口減少、高齢化が深刻となっている。
東独国民は「われわれは2等国民だ」と自嘲することがある。統一後も東西間には「心の壁」とも呼ばれる心理的な分断が社会的な統合を妨げているといわれてきた。これが、東独の住民が政治的に極端な選択肢、AfD支持に走る要因の一つとなっているというのだ。
今回の州議会選で注目されるのは、AfDの思想の核といわれるテューリンゲン州のビョルン・ヘッケ氏の動向だ。このコラム欄でも数回紹介したが、ヘッケ氏は連邦憲法擁護庁(BfV)からも危険人物として監視対象となっている(「『極右』政党という呼称は正しいか」2024年2月2日参考)。