「私も学校の部活の帰りに友達と別れた後、家のそばの曲がり角にさしかかったとき、後ろから男につかまれて…」

横田めぐみさんと一時期共同生活した曽我ひとみさんは、めぐみさん本人がこう言ったことを覚えている。5月に、めぐみさんが拉致されたとされる新潟県護国神社近くの現場を、私はこの目で見た。

その際に、付近を散歩していた夫婦から、私もこの「曲がり角」について直接聞いた。かつてこの場所には、滋さんが務めた日本銀行の行員用住宅があったそうである。神社の鳥居横には、新潟県警が情報提供を求める看板が今も設置されている。

日本海が、文字通り目の前に広がる場所である。ここでめぐみさんは拉致され、そのことを知らない早紀江さんが双子の拓也さんと哲也さんの手を引いて必死に海辺を探す姿を想像するだけで、自然と涙がこぼれた。

これから1か月後の10月5日、めぐみさんは還暦を迎える。47年という長きに渡って時が刻まれた残酷な現実を、国民は同胞の痛みとして直視しなければならないと思う。