デザインは元アウディのデザイナーが担当。RWDとAWDを設定
世界最大のBEVメーカーであるBYDは、約2年前に日本法人を設立。3台のBEVを日本市場に導入することを表明した。まずは2023年にCセグメントSUVのATTO 3(アットスリー)、少し遅れてBセグメント・コンパクトカーのDOLPHIN(ドルフィン)を発売。2024年の5月までの約1年半で合計2277台を販売した。
販売網の整備も積極的だ。2024年6月6日にオープンした最新の広島で早くも日本全国で55個所の販売拠点を設けた。長澤まさみさんを起用した「ありかも、BYD」CFキャンペーンも話題を呼んでいる。
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日本でもしだいに存在感を強めるBYD。その第3弾として、Dセグメントのスポーツセダン、SEAL(シール)を発売した。シールは2022年に中国でローンチされ、すでに23万台を超える販売実績を誇るという。
シールで、まず驚かされるのが価格だ。ラインアップは駆動方式だけが異なるシンプルな2本立て。魅力的な仕様とスペックを誇り、シングルモーターのRWDが528万円、ツインモーターのAWDが605万円とリーズナブルだ。しかも導入記念の最初の1000台はそれぞれ495万/572万円とさらにお買い得な設定となっている。
気になる一充電当たりの航続距離はAWDで575km、RWDは640kmに達する。全車ナッパレザーシート、19インチアルミ、パノラマガラスルーフなど装備は充実。システムモーター出力が360kW/670kWと異なる以外、駆動方式による大きな差はない。
BYDには王朝シリーズと海洋シリーズがある。車名のSEALはアザラシを意味し、第2弾のDOLPHIN(イルカ)とともに海洋シリーズに属する。
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日本でアザラシは、どちらかというとユーモラスなイメージがあるように思う。だがBYDのアザラシはなかなかカッコイイ。クーペライクなスタイリッシュなフォルムでCd値は0.219と良好だ。ボディサイズは4800×1875×1460mm。日本の道路環境でも持て余す心配はない。
各部の造形は凝っている。海洋シリーズらしく、フロントバンパー横には海の波を想起させるC字型を反復したイルミネーションが配されており、シーケンシャルウインカー付きのテールライトは、空と海の広大さを表現したという。
ブラックで統一されたインテリアは精悍な印象。躍動感のあるデザインとするともに、随所にバックスキンやステッチが施され質感はハイレベルだ。率直にいって、ライバルとなるテスラ車よりも仕立てのよさは上回っている。加えて輸入車ながらウインカーレバーが右側にあるのも好印象である。
BYDお得意のワンタッチで縦横に回転できるディスプレイは、大型15.6インチとなり、カーナビやインフォテインメントだけでなく、ステアリングの重さや回生ブレーキの強さなど走りに関する設定も選べるようになっている。テスラほど極端ではないが、ディスプレイに各種機能を集約するという発想は共通だ。
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室内スペースは十分以上。ビッグキャビン造形のメリットを活かし、後席の居住スペースはゆったりとしている。シールは「CTB=セル・トゥ・ボディ」という新しい構造を採用し、電池パックにボディ構造の役割を持たせた。とはいえフロア下にBYDならではのリン酸鉄リチウムイオン電池を用いたブレードバッテリーが敷き詰められていることに変わりはない。フロアはやや高め。それでも3m近いホイールベースも効いてひざ前のスペースは実に広々としている。ドルフィンと同様に後席には幼児置き去り検知システムが装備され、広いパノラマルーフのおかげでどの席に座っても開放感を満喫できる。 400リッターの容量を持つトランクは奥行きがかなり長い。フロントにも50リッターの収納スペースが設けられているのも重宝しそうだ。
静かで滑らかな走行フィールが魅力。AWDは高い瞬発力にも驚く
優れた走りの実力にも感心した。RWDとAWDではフィーリングがだいぶ異なり、軽快なRWDに対し、AWDは瞬発力が際立つ。ハイパフォーマンスBEVに乗っていることをより実感させる。0→100km/h加速が、RWDより2.1秒も速く、わずか3.8秒でクリアする。
RWDでも速さに不満を感じることはなく、AWDの加速フィールと俊敏なハンドリングは、同セグメントに属するテスラ・モデル3やBMW・i4の高性能グレードと比べても遜色ない。
シールは動き始めがやや飛び出しぎみなところに若干の荒さを感じる。だが静かで滑らかで力強い走りの完成度は高い。ダブルピニオン式電動パワーステアリングも利いて、すっきりとした操舵感と正確でクイックな操縦性を実現している。ワインディングではまさにオンザレール感覚が味わえる。
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足回りはスポーティな印象。それなりに引き締まっていて、とくに入力に応じて減衰力が変わる可変ダンピングアブソーバーを装備するAWDは、かなり硬めの乗り心地と感じた。同様の傾向はテスラ車にもある。車両重量の重いBEVでスポーティなハンドリングを追求すると、どうしても硬くなるようだ。
BEVではないが現行メルセデス・ベンツCクラスのAMGラインも、導入初期は乗り心地が硬く動きが過敏だったことを思い出す。その点、BMW・i4は当初から完成度が高く、洗練されていた。
これらのDセグメントモデルに対して、シールのプライスタグは内容のわりにかなり抑えられている。このところ輸入車が軒並み値上がりする中、この価格帯でこれほどのパフォーマンスを実現した点に拍手を送りたい。シールは新たな自動車体験を約束する。
撮影協力/マースガーデンウッド御殿場
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