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バングラデシュ北部シャハジャドプールに住むシャドット・フセインさん(2017年当時47)は、全身を病魔に覆われ、視力まで奪われようとしていた。シャドットさんの病気は、全身の神経に腫瘍が発生する遺伝子疾患「神経線維腫症」とみられている。手術によって腫瘍を除去しなければ、やがて永遠に光を失う絶望的に状況にありながらも、経済的に困窮しているシャドットさんは手術費用を捻出できずにいた。
シャドットさんが腫瘍の存在に気づいたのは13歳のときだった。額の腫瘍が少しずつ大きくなっていったのだ。しかし、病状がここまでひどくなったのは2010年以降のこと。全身に広がっていた腫瘍は重く、かゆみを伴い、シャドットさんは上半身に服を着ることすらできない。また、十分な咀嚼もできないため、特定の食品を食べることも難しい。
シャドットさんは27歳の時、19歳のタージモヘルさんと結婚した。その5年後、2人の娘が生まれたが、娘たちはすでに結婚してシャドットさん夫婦のもとを離れている。夫婦は現在、12歳(2017年当時)の息子、アブドゥーラさんを育てている。しかし、このアブドゥーラさんは父親の醜い外見を嫌って近寄ろうとしないという。
かつては労働者として定職に就いていたシャドットさんだが、病状が悪化するにつれて簡単な仕事でさえミスが増えるようになり、職を失ってしまった。シャドットさん夫婦の収入が途絶えたため、今や薬を買うことも治療を受けることもできないうえ、アブドゥーラさんを学校に通わせることすらままならないのだ。こうした窮状について、タージモヘルさんは次のように語る。
「夫は現在、自分では何もできません。着替えやトイレも手伝わなければならないのです。そのため、私は働けず、村人たちから衣服を恵んでもらっています。夫は病気で、私はこの事実を受け入れるしかありません」
シャドットさんの治療費については現在、地元のソーシャルワーカー、モハメド・マムン・ビスワスさんが大々的なキャンペーンを行って資金を集めている。その努力が実り、シャドットさんは首都ダッカにある国立神経科学病院へと入院できることになった。
タージモヘルさんは「夫が回復することを神に祈るばかりです。私は、残された人生を未亡人として生きるつもりはありません。私たちの生活に平穏など、ないのです」と胸の内を吐露する。シャドットさん夫婦の戦いはこれからも続く。 (文=標葉実則)
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