弁護士「損害賠償義務が発生するとは思えません」

 では、もし仮にKADOKAWAがNewsPicks側に対し法的手段をとった場合、損害賠償が認めらる可能性はあるのか。山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士はいう。

「この問題、いろんな方がいろんなことを言っていますが、『KADOKAWAがハッキングした犯人と交渉していることを暴露したNewsPicks』に、損害賠償義務が発生するとは思えません。KADOKAWAは『犯罪者を利するような報道』云々と発表していますが、『犯人と交渉していること』を報道することが、なぜ犯罪者を利するのか全く理解できません。単に、『犯人と交渉していること』を報道されたことで株価が急落したことをNewsPicksになすりつけているようにしか思えません。

 そもそも、ハッキング被害を受けた企業が、その被害回復を図るため、その選択肢の一つとして“身代金”を支払うことを考えること自体は責められません。『“身代金”を支払う』行為自体も、外為法などで国際的な送金規制にひっかからないなら、特段、違法となるようなことはありません。

 次に、NewsPicks側の行動ですが、リークや取材などでこの情報をつかんだとして、『株価操作(金商法等)』や『風説の流布(不正競争防止法等)』の目的で報道したのであれば本末転倒ですが、また、捜査機関による事実上の報道規制などがあれば別ですが、報道機関として報道するのに“違法なタイミング”などあり得ません。

 はたして、NewsPicksが報道したことで、KADOKAWAにどのような損害が発生したかですが、信用毀損、株価下落などが考えられるとしても、それは『犯人と交渉している』こと自体が企業としての信用を損ねる行為、株価が下落する行為であるからであって、報道したこととの間に『相当な因果関係』は認められないものと考えます。そのほか、いろんな方が、模倣犯が出るリスク、KADOKAWAが交渉で不利になるリスクなどを挙げていますが、今さら報道機関に求めることができるような事項ではないでしょう」

(協力=田中健太/データアナリスト・鶴見教育工学研究所、協力=山岸純弁護士/山岸純法律事務所代表)

●田中健太/データアナリスト、鶴見教育工学研究所 東京工業大学大学院 博士課程単位取得退学。ITベンダー系人材育成サービス企業で、研修開発、実施に従事。クラウド、IoT、データサイエンスなどトレンド領域で多数の教材作成、登壇。リサーチ会社でデジタルマーケティング領域のデータ分析に従事。アンケート、アクセスログ、位置情報、SNS等を組み合わせた広告効果の分析を行った。現在は、フリーランスとして教育の領域で活動。

提供元・Business Journal

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