「今と同じぐらいの保険料で新しい保険に加入できます」。保険の更新や新商品が発売されるタイミングで、生命保険会社から「転換」を提案されることがある。保険の加入から時間が経っていれば、年齢が上がっている分保険料も上がるのが一般的なので、転換はお得に感じるかもしれないが、思わぬ失敗につながることもある。

生命保険の転換とは

生命保険の「転換」とは、いわば保険の「下取り」だ。現在契約している保険の積立部分を保険料の一部に充て、同じ保険会社の新たな保険に加入し直す。保険料は、転換時の年齢・保険料率で再計算される。告知や診査が改めて必要であり、健康状態によっては転換できないこともある。転換すれば現在の契約は消滅し、元には戻せない。

「転換」と「更新」との違いは?

「更新」とは現在の契約をそのまま継続することであり、転換とは大きく異なる。保険料は更新時の年齢・保険料率で再計算されるため、通常は更新前より高くなる。また告知の必要はなく、その時の健康状態に関係なく更新できる。

生命保険の転換によるメリットはほとんどない

お得に見える転換だが、実際にはメリットはほとんどないと言える。

生命保険の転換は次回更新時に保険料が大幅に上がる

転換は、保険料の上昇分を自分が前の保険で積み立てていたお金で前払いしているに過ぎない。手元のお金が減らず、毎月支払う保険料が抑えられるため得したように感じるのだ。

しかし、転換時には保険料の上昇が抑えられたとしても、次回更新時に保険料は大幅に上がる。年齢により保険料が上がるのに加え、転換時のような積立金による「補てん」がないからだ。

転換すると予定利率が下がる可能性が高い

昔加入した保険を転換して新たに保険に加入すると、予定利率が下がって保険料が上がる可能性が高い。

予定利率とは保険会社が見込む運用利回りのことで、高いほど保険料を低く設定できる。

1990年代前半の予定利率は5%を超えており、この時期に契約した保険はお宝保険とも呼ばれる。その後予定利率は下がり続け、保険会社が予定利率を設定する際の目安である標準利率は2017年以降0.25%にまで低下している。高い利率の保険契約を見直す際は、そのメリットを残せる方法で見直すのが賢明だ。

生命保険の転換で得をするのは保険会社

保険会社の営業職員は、さまざまなセールストークで高い利率の古い保険契約を転換したがる。金利の低下などにより、保険会社はかつて約束した利回りでの運用が難しくなっている。契約者にとっては「お宝保険」でも、保険会社にとっては「お荷物保険」というわけだ。

医療保険など、以前とは保障内容が変化している保険も確かにある。しかし、終身保険は今も昔も保障内容は変わらない。それなら古くても予定利率が高く、保険料が安い保険のほうがいい。

転換により不利な契約条件に変更されるケースが多い

生命保険の転換では、契約者が不利な契約条件に変更されるケースが多い。転換する前に、以下の項目をよく確認しておこう。

  • 必要な保障を確保できるのか
  • 保険料を支払う期間が長くなっていないか
  • 積立部分(終身保険部分)が減っていないか
  • 解約返戻金額は転換前後でどう変化するか

    転換前後の契約内容の比較や契約者にとって不利益となる点について、保険会社は書面を用いて説明する義務がある。

    生命保険の見直しは「転換」ではない方法で

    生命保険の保険料の支払いを減らしたいときに、見直す方法は転換だけではない。

    「お宝保険」は高利率のメリットを残す方法で見直す

    高い利率の契約の保険料を見直さなければならないなら、そのメリットを生かしたまま見直すのがいいだろう。それには特約部分のみの変更や減額(一部解約)や、払済保険への変更といった方法がある。

    払済保険とは保険料の払込を中止し、その時点の解約返戻金を一時払保険料として保険期間が同じ保険に加入する方法だ。特約はすべて消滅し、変更時の解約返戻金額に応じて保障額は下がるが、元の契約の予定利率が維持され、減額された保障と積立金の運用が続く。

    生命保険の保障を下げずに保険料を抑えたいなら……

    転換では、現在と同じ保険会社の商品しか選べない。保障を下げずに保険料を抑えたいなら、他社の商品も選択肢に含めて見直すべきだ。結果的に保険を解約するなら、解約返戻金を自分で受け取り、より幅広い選択肢の中から自分に合う保険を選ぶといいだろう。

    生命保険の転換は本当に必要かをよく考えてから判断を

    生命保険を乗り換える際には、必ず新しい保険に加入してから元の契約を解約するようにしたい。健康状態によっては、新しい保険に加入できないこともあるからだ。

    転換については内容をよく理解し、納得できなければ契約書にサインしてはならない。転換を勧める側のメリットは多いが、勧められる側のメリットは少ないからだ。

    文・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
     

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