そしてこれらのうちのStaphylococcus epidermidisとCorynebacterium amycolatumは、蚊を引き寄せることで知られる乳酸の一種「L-(+)-lactic acid」とそれが発する匂いを生成すると考えられています。
つまりこれらの皮膚細菌が乳酸を生成しなければ、私たちは蚊に襲われない可能性があります。
アクバリ氏ら研究チームは、この分野に焦点を当て、新たな蚊よけ方法を開発しました。
遺伝子組み換えしたヒト皮膚細菌をマウスに塗ると蚊よけになる
まず研究チームは、遺伝子操作により乳酸の生成を大幅に低減させた2種類のヒト皮膚細菌(Staphylococcus epidermidisとCorynebacterium amycolatum)を開発しました。
次に、マウス実験によってこれら遺伝子組み換え版ヒト皮膚細菌の効果を試すことにしました。
生きたマウスの毛を剃った部分に、遺伝子組み換え版ヒト皮膚細菌と、天然(遺伝子組み換えなし)のヒト皮膚細菌を塗布し、その違いを観察したのです。
ヒト皮膚細菌を塗られたマウスは、その後14日間、毎日10分間だけ3種類の蚊(ネッタイシマカ、ハマダラカ、イエカ)にさらされました。
これらの蚊はいずれも、マラリアやデング熱などの病気を蔓延させる原因となっています。
そして実験の結果、塗布3日後から、遺伝子組み換えの細菌は、天然の細菌と比較して、蚊の誘引力を最大64.4%減少させることが分かりました。
しかも、その蚊よけ効果は11日間も持続したのです。
生きたヒト皮膚細菌が定着して効果を発するまでには、いくらか時間がかかるようですが、その分1度塗布すれば効果が長持ちするというわけです。
また、蚊が遺伝子組み換えの細菌を塗ったマウスにとまった場合でも、そこから吸血せずに立ち去る割合が多いと分かりました。