こうして、かつては社会全体でやんわりと受け止めていた身の回りの問題が、どんどん医療の問題として病院に持ち込まれていくわけです。

もっとひどい例では、子供は元気なんだけど、学校から「検査して診断書を貰ってこい」と言われる「診断書需要」の受診も多いです。

これが「社会の医療化」です。

事実、今の小児科外来は、本来薬剤が必要でないような軽微な症状の子どもたち(とお母さん)で溢れています。

まとめ

今回の記事をまとめるとこうなります。

そもそも先進諸国は医療費が無料。日本でも小児医療費の無料化は本来なら問題ないはず。 問題は「医療がビジネス化していること」と「社会全体のつながりの希薄化(による社会の医療化)」 この2つの問題に対峙せずに小児医療費を無料化したら、小児医療の市場は更に拡大してしまうだろう(つまり全体の医療費は増大)

医療制度を語るとき、どうしても目先の経済的合理性とか医師不足など医療資源の問題などに着目しがちですが、実はこうした国際的・社会学的な俯瞰的視野が非常に大事なのです。

前明石市長の泉房穂さんが小児医療費無料化を導入されたとき、泉さんは「0歳児見守り訪問・おむつ定期便」も始められたそうです。

おむつ定期便のHPにはこう書いてあります。

この事業は、配達に合わせて赤ちゃんと保護者の見守りを目的としています。そのため、おむつ等の支給品は、見守り支援員と対面し受け取ることが必要になります。 子育て経験のある見守り支援員がお届けしますので、悩みやお困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。

出典:明石市HP

人と人との「つながり」をさり気なく演出するような温かな取り組みです。こんな素敵な取り組みができる明石市なら小児医療費無料化も成功するかもしれませんね。

以上、「小児医療費無料化は正しいのか?」でした。