4バルブの直6DOHCでサーキットを席巻
初代スカイラインGT-Rは「レースで勝利する」ために開発された。中でも1970年10月に登場したHT仕様(KPGC10型)は、「ハコスカのR」の中でも高い人気を誇る。
1970年代初頭、市販車とレースマシンは近い存在だった。GT-Rのパワーユニットは、レーシングカー「R380」用GR8型をベースにした直列6気筒DOHC24V(S20型)。S20型は当時、日本唯一の1気筒当たり4バルブのレイアウトで、1989ccの排気量から160ps/18.0kgmを発生。燃料供給装置は口径40㎜のソレックス製キャブレターを3連装。エキゾーストシステムは効率に優れた等長サイズのステンレス製。点火系は三菱製フルトランジスタータイプが組み合わされた。トランスミッションは5速MT。GT-RのS20型ユニットは、ベース車の2000GT用L20型比で30〜55psパワフルだった。
4ドアセダン(PGC10型)としてデビューした初代GT-Rは、1969年5月の’69JAFグランプリでレースデビューを飾る。初戦こそトヨタ1600GTの善戦にあい、きわどい勝利だったが、その後は圧倒的なパフォーマンスで連戦連勝。「負けるとニュースになる」といわれるほど強かった。しかし1970年5月の日本グランプリでファミリア・ロータリークーペが登場すると、GT-Rのアドバンテージは減少。ロータリーエンジンは、GT-Rを追いつめていく。
GT-Rを再び王者の位置に戻したのがHT仕様だった。HTの全長は、セダンに比べて65mm短い4330mm。ホイールベースは同70mm短い2570mm、車重は20kg軽い1100kg。軽量化とボディのコンパクト化はコーナリングをはじめ、運動性能の向上をもたらした。外観はワイドなレーシングタイヤの装着を想定してリアのホイールハウスを拡大。HT仕様はFRP製オーバーフェンダーを標準で装着する。市販モデルの公称最高速度は200km/h、0→400m加速は15.6秒と、当時国産最速級を誇った。
HT仕様のGT-Rは、1971年3月開催の全日本鈴鹿自動車レースで初陣を飾る。ワークスの黒澤元治選手が、Tクラス優勝(総合5位)。その後、1972年の’72GCシリーズ富士インター200マイルレースまで、GT-Rは公認レース通算52勝を重ねた。 HT仕様の初代GT-Rの生産台数は1197台(4ドアセダンは832台)。初代GT-Rは、最近では海外でも人気が高まっている。
1971年 日産スカイライン2000GT-R主要諸元
モデル=1971年式/スカイラインHT2000GT-R
全長×全幅×全高=4330×1610×1385mm
ホイールベース=2570mm
車重=1100kg
エンジン=1989cc直6DOHC24V
エンジン最高出力=160ps/7000rpm
エンジン最大トルク=18.0kgm/5600rpm
トランスミッション=5速MT
サスペンション=フロント:ストラット/リア:セミトレーリングアーム
タイヤ&ホイール=6.45H-14+スチール
駆動方式=FR
乗車定員=5名
提供元・CAR and DRIVER
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