東京・板橋区に持ち家を購入して住んでいるという人が、豊洲のタワーマンションに住んでいる人から「もう少し頑張れば豊洲にも手が届いたんじゃない?」と言われ、「私は豊洲に住めないから板橋区にいるんじゃなくて自分が板橋区が好きで選んだ」と答えたというエピソードをX(旧Twitter)上にポストし、一部で話題を呼んでいる。板橋区が好きで長年住んでいるという“板橋至上主義者”は少なくないが、居住するエリアという観点で見た場合、東京23区のなかで板橋区はお薦めといえるのか。また、板橋区の魅力や住むメリットは何か。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 東京23区の住宅の上昇が続いている。2023年に販売された新築マンションの一戸あたりの平均価格は1億1483万円と初めて1億円超えとなった(不動産経済研究所の調査より)。中古マンション価格も平均希望売り出し価格が7231万円(70平方メートル当たり/4月/東京カンテイの調査より)となっており、高止まりが続いている。

 なかでも東京都心6区(千代田区・中央区・港区・新宿区・文京区・渋谷区)は特に高水準の価格であり、再開発ラッシュでタワーマンションが多数そびえ立つ江東区・豊洲エリアも「勝ち組のシンボル」としての人気上昇と比例して物件価格が上昇。「豊洲のタワマンの坪単価は600~650万円くらいが相場」(不動産業界関係者)だという。

あまり注目されてこなかったことが奏功

 そんな豊洲タワマン住民と板橋住民の冒頭のやりとりがX上でポストされ、以下のようにさまざまな声が寄せられ、ちょっとした話題になっているようだ。

<35まで住んだ板橋区が私も日本で一番だと思ってます。今は結婚した妻の家庭の事情で別な場所に住んでますが、人生の最後は板橋区に住みたいです。板橋最高!>

<私も同じ城北エリアに住んでいます。かつて不動産業に身を置いていましたが、私は長い目で見れば、絶対昔から人の住んでいる場所が勝つと思っています。災害少ない、地盤が安定、人気も安定、古くからの文化も醸成されている>

 ちなみに板橋区の人口は約58万人で東京23区内では7番目に多いが、板橋区の魅力や住むメリットについて、住宅評論家・櫻井幸雄氏はいう。

「不動産業界のなかでは以前から、板橋区は非常に特殊な地域だといわれてきました。気に入って長く住んでいる人は多いのですが、外からの流入が少ないのです。住んでいる人は、まるで良さが知られて外から流入する人が増えてしまうことを避けるかのように、その良さを積極的にアピールしない傾向があることも影響しているのかもしれません。

 板橋区の魅力としては、賃貸住宅の家賃やマンションの分譲価格が東京23区のなかでは比較的低いものの、大手町まで直通で行けて通勤時間帯の混雑も他の路線と比べると緩いといわれる都営三田線が東西に走っている点や、平行して走っている東武東上線で池袋まですぐに出られる点があげられます。たとえば東武東上線でいえば池袋まで近い大山駅や成増駅の周辺の家賃相場は低めですし、区内にはスーパーなども多くて住みやすいため、まさに“穴場”といえるエリアです。これまで、あまり注目されてこなかったことが、逆に板橋区の魅力の維持につながってきた面もあるでしょう」

 隣接する区であり、かつ同じく東京23区の最北に位置する北区、練馬区と比較した場合に、どのような違いがあるのか。

「この3区のなかでは、高級住宅地を抱える練馬区が一番上で、昼間から営業している飲み屋が多い赤羽駅周辺や公営ギャンブルで知られる西川口が近い北区が一番下で、板橋区はその中間という序列イメージがありました」

 逆に板橋区に住む場合のデメリットなどは、あるのか。

「川越街道、首都高5号線、環七通り、環八通りなど交通量が多い幹線道路が多い点でしょうか。家賃が安いと思って入居してみたら、そのような道路のすぐ近くで騒音が酷かったというパターンも考えられるので、住宅を選ぶ際には周辺地域の道路の存在に注意したほうがよいでしょう」