まずはダイキャストミニカーを参考に
当「CARSMEETモデルカー倶楽部」では、このたび新たな試みとして、フルスクラッチ(プラモデルの存在しない車種の完全自作)の工程を逐一お伝えしていくこととしたい。モチーフとなる車種はアルファロメオ159スポーツワゴン。制作を行うモデラー、Ken-1氏の愛車である。以下、同氏の意気込み、そして159との馴れ初めをお読みいただこう。
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「前回の元愛車仕様プレリュード、なかなか好評のようですよ」
「よかった、ありがとうございます」
「で、次の企画なんですが、プレリュードが最初の愛車ということなので、今度は現在の愛車アルファ159を制作なんてどうですか?」
「今のやつですか!? でもキット無いですよね」
「フルスクラッチということで」
「……!? うーー~ーん……時間的にはどんな感じに……?」
「じっくり取り掛かってもらって大丈夫です」
「……では、やります!!」
と、ざっくりこんなやりとりがあり、愛車シリーズ(?)第二弾、今乗っているアルファロメオ159スポーツワゴンのフルスクラッチ制作が決まってしまいました。今までボディぶった斬ってのニコイチ、サンコイチといった改造制作や、パテやプラ材を使っての形状変更、パーツ制作といったことは散々やってきましたが、全く何もないゼロからのフルスクラッチは初めて。
いつかはチャレンジしたいという気持ちはありましたが、それができるかはまた別の話。しかし、実はこのクルマの購入を決めた時点で、コレは形あるものとして自分で作ってみたいなぁと考えていたのも事実。
ひょっとして何処かからガレージキットとか出てないかと探したり、無いようなのでとりあえず各サイズのミニカーを買い集めてみたりしていました。でも色がちゃうねんなーとか、コレはようできてるけど仕上げが……とか、形状か微妙に違うねんなとか、159オーナーとしてモデラー・フィニッシャーとして、満足しきっていない自分が居たりして。
なにより、このフェンダーラインを削り出してヤスリかけて形にしたいもんやわ~とか、普通ならそんなこと考えんようなことを考えたりしてると今回の話がやってきたのです。そういうふうになってるんやなと思いつつも、技術的なこともそうですが時間の都合もある。趣味で作るのではなく、どうしても限られた条件の中での制作には責任が伴うわけで相当悩んだんですが、ひと月ふた月で仕上げるのではなく、ある程度の時間をみた長期連載でOKということでチャレンジすることにしました!
最近の流れとして3D出力ベースによる工作がメジャーになりつつありますが、今回はできる限りアナログ作業をメインにして制作していきたいと思っています。とはいえタイヤ・ホイールは3Dに頼ることになりますが。
まだ大筋のプラン建ての段階ではありますが、ウェリーから発売されている1/24サイズのミニカーを買っていたので、こちらと実車カタログの三面図を照らし合わせつつ、形を出していこうと思っています。三面図から実車の1/24サイズを割り出し、ウェリーのミニカーと比較するときちっと1/24サイズが出てるようなので、安心して立体資料として活用できそうです。
「じゃあそのミニカーでいいんじゃないの!?」というもっともな意見もあると思うのですが、やっぱり自分で作ってみたくなるのがモデラーの性。僕もしっかりその一員だったようですね(笑)。ひとまずその割り出した数値からシャシーのベースをプラ板で切り出してみました。さて、今後どうなることでしょう??
幼少期の思い入れから手に入れた159
模型誌でアルファロメオの作例を担当する機会が多く、なんか最近よくアルファの模型といえば僕、みたいな空気が一部で出てるようなのですが(笑)、実はそう思われるような、そこまでゴリゴリのアルファマニアというわけではありません、全然そこまで詳しくないですしね。
しかしアルファロメオというメーカーにはちょっとした思い入れがありまして、僕が幼少期、クルマ好きだったうちの父親が1750ベルリーナに乗っていた時期があり、僕はそのロメオに乗せてもらってドライブに行くのが楽しみという子供となっていました。当時父親は現在主流となっている「アルファ」という呼び方ではなく、「ロメオ」と呼んでいて、僕もロメオロメオと呼んでましたね(笑)。
独特のワイパーの動き、そしてリアのスクエアなホイールアーチ、何より他と被らず滅多に見かけないロメオ・ベルリーナは子供心に強烈な印象を残したのでしたが、やはりアルファロメオ、頻発する故障によりあまり思うように乗せてもらえなかった思い出があります。
そして当時自身でお店を始めた父親は、その店の切り盛りに、そしてやはり相次ぐ故障で修理費が掛かるばかりで乗ることができない車に対する母親からのプレッシャー、我が家の家計状況、何よりこれから大きくなる自分を含めた二人の子供の養育費を考え手放すことを決意。そんな判断の理由もまるで分かってない幼い自分は、ロメオが無くなるということに泣いて反対したのを覚えています。
そういう経験を幼少期にしたせいかアルファロメオというメーカーは自分にとってどこか思い入れがあるブランドとなっていたのです。とはいえ外車、しかもイタ車。免許取得後もそんな思い入れがあるからといって、「ほな手に入れるか!」とは、なかなかなれない(笑)。
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155や147、156など魅力的なアルファが登場するも現実考えると、とても無理だなと横目でみつつ、やっぱりクルマはMTが楽しいなんて言いながら、カリブやインプレッサワゴンなどちょうどいいクルマを乗り継ぐ。そんな状態が何十年も続くのです。
時は流れ、自分にクルマ好きの影響を与えた父親が亡くなったことで店を引き継ぐことになってからしばらく、自身の体に起こった左足の不調からクラッチが踏めずクルマが運転できない事があり仕事ができないという事態が。せめて2ペダルだったら左足の不調だとしても仕事の穴を開けることはなかった。
そしてそのほぼ同時期に、共に店で働いていてくれていた母親を亡くしたこともあり、そこで自分も動けなくなると誰もフォローできないという現状に対して、いつまでもクルマはMTじゃないとダメって言ってられる余裕なんて自分にはないことに気がついたと同時に、MTがいいと言いつつそれに縛られたクルマ選びをずっとしてきて、本当の意味で自分の好きなクルマに乗ってこなかったんじゃないか? とも気が付きました。
何より、また不調が再発した時にMTではどうにもならない(実際、その後も再発)。自分にとって大きなマインドシフトが起きた瞬間でした……そしてクルマを乗り換えることを決意。とはいえ仕事でも使うことを考えるとワゴンは絶対条件、さらに以前は狭い路地も入ることを考え5ナンバー縛りも入れて、さらに自分の好みを加えるとほんと選択肢はほとんどなかったのですが、MT縛りを外すだけでかなりの選択肢が増えることに。
そこで改めて見渡してみるとアルファ159が目に飛び込んできました。実は前回の乗り換えタイミングでは156ワゴンのMT載せ替え車両というのを見つけ、それにしようかと思ったものの、やはり怖くて踏み切れなかったんですよね。
その後悔が残っていたことで再度156をぼんやり眺めていたんですが、待てよ、MT縛りを取った今なら159でもいいんじゃない? いやむしろその方が年式新しくなるし、故障も少ないようだと。そして何よりジウジアーロ・デザインの文句なしのかっこよさ。車格がデカくなるのは気になったものの、それより小さかった156より実は取り回しが良かったり、MTはないけどもセレスピードだったり、しかもそれも159になって格段に良くなったとか……。
そんなことを考えているとワインレッドの個体が東京で売られているのを発見。ワインレッドは大好きな色で、以前に自身が監修という形でMyStarカラー ヴィーノロッソという模型用カラーを発売してもらったくらいに(笑)。これは縁なんじゃないか? 人生なんてどうなるか、いつ終わるかもわからない。自分が憧れ、かっこいいと思うクルマに乗れるチャンスなんて残り少ない。もう行ったれぇ~という心境で東京に向かったのです……。つづく(笑)
作例制作・文章・写真=Ken-1
文・秦正史/提供元・CARSMEET WEB
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