先週閉幕を迎えたパリ五輪だが、トライアスロンなど5種目の競技会場となったセーヌ川の汚染問題が気になった。2021年東京五輪でもお台場の海が「トイレのようなにおい」と言われたことを思い出した人もいるだろう。東京もパリと同じく、大雨が降ると生活排水が未処理のまま河川に放出される「合流式」下水システムである。
下水道整備の早かった都市ほど旧式の合流式下水道
東京五輪の際、筆者は「仮にも先進国の首都が下水を垂れ流しているのか」と衝撃を受け、遅まきながら『うんちの行方』(神舘和典・西川清史著、新潮新書)を読んで勉強をした。
パリ五輪の話題を機に再読したのだが、これは「先進国の首都なのに」ではなく「先進国の首都だからこそ」の問題。先進国の首都・主要都市ほど早くに下水道が整備されたため、それだけシステムが古いのだ。
ロンドンの下水道もヴィクトリア朝時代に作られたもので、大部分が合流式。ワシントンの約3分の1、ニューヨークの60%、シカゴの大部分が合流式だ。地面に埋まっている下水道を新しいシステムに入れ替えるには膨大な手間と時間がかかる。こういう時こそテクノロジーの出番なはず。ということで、下水道の問題に取り組むテクノロジーと海外スタートアップを調べてみた。
IoTやAI活用、下水道管理をDXするソリューション
古い下水道システムの問題を解決するうえでは、IoTやAI、ロボット工学などの技術活用が考えられる。実際、Fluid Analytics(旧Fluid Robotics)というインド・アメリカのスタートアップは下水管をスキャンして欠陥を検出する小型ロボットを開発。AIベースの下水管検査ソフトウェア、ロボットとIoTによる排水モニタリングなどのサービスを提供している。
また、イギリスのnuronは、下水道向けに「神経系統」のように機能する光ファイバー技術を提供する。下水管内の流量や深さ、温度などの運用パラメータをリアルタイムで連続的にモニタリングし、閉塞や流入などの事態を可視化し、予防措置を可能にするという。