これにより多くの患者が救われているものの、下痢や強い眠気、体重増加といった副作用が伴うことがあります。
こうした薬の副作用は、体が慣れるにつれ軽減されていくとされますが、出来れば薬物治療に頼らず解決したいと考える人は多いでしょう。
こうした背景もあって、専門家たちの間では、抑うつ症状を軽減する「リスクのない健康食品」を探すことが、予防と治療における1つの戦略として認識され始めています。
例えば近年の研究では、抑うつ症状の軽減と抗酸化・抗炎症作用の関係が注目されています。
ビタミンDやビタミンE、クルクミンなどは抗酸化作用を通じて、脳の健康を維持し、抑うつ症状を軽減すると考えられてきました。
ではより一般的で、献立を考える手間もなく摂取できる食品はないのでしょうか?
そこで今回、バロン氏ら研究チームが着目したのが、健康食品として一般的な「酢」です。
最近の他の研究でも、「酢が抑うつ症状を軽減させる可能性がある」と示唆されており、バロン氏らの研究は、酢の効果を改めて確かめることにしたのです。
毎日の酢が抑うつ症状を42%も減少させる
実験には、太り気味であるものの、それ以外は健康な成人28名が参加し、4週間毎日酢を摂取してもらいました。
彼らは、2つのグループに分けられ、片方は赤ワインビネガー(赤ブドウを原料とした酢)大さじ2杯を1日2回摂取(計2.95g)しました。
もう片方のグループは、対照群としてごく少量の酢が入ったカプセル(0.025g)を毎日摂取しました。
そしてテスト期間中、「PHQ-9(うつ病を評価する質問項目)」など、いくつかの質問票を用いて、抑うつ症状の変化を調べました。
その結果、ごく僅かな量しか摂取していない対照群でも、PHQ-9における抑うつ症状のスコアが18%減少しており、さらに酢の摂取量が多いワインビネガーのグループでは、スコアが42%も減少したのです。