イタリアンセンスと速さの見事な融合

 WRC(世界ラリー選手権)に参戦したランチア・デルタは、1987年から6年連続でチャンピオンマシンに輝く金字塔を樹立した。その最終モデルが、1993年発表のHFインテグラーレ・エボルツィオーネⅡ(EVO 2)である。

 1979年デビューの初代デルタは、もともとWRC参戦を前提にしたホットモデルではない。VWゴルフをライバルとするプレミアムハッチバックとして誕生した。ランチアがデルタでWRCに参戦する方針を急遽決定したのは、1986年にグループBマシンが中止になり、1987年から量産車に近いグループAカテゴリー(生産台数が多く、改造範囲が狭い)で争われる規制変更があったからだ。

 1986年にランチアは、2リッター直4DOHCターボエンジンを積んだ4輪駆動車のデルタHF4WDを発表。このモデルが1987年のWRC初戦から参戦し、圧倒的な性能でチャンピオンの座に就いた。

【20世紀名車】WRCを席巻したラリースペシャリスト、’94ランチア・デルタHFインテグラーレEVO2の華麗なる世界
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 その後、ランチアは毎年のようにマシンの戦闘力アップを図る。1988年にはHFインテグラーレ、1990年にはHFインテグラーレ16V、その2年後にはボディを大幅に補強し、トレッドがワイドになったHFインテグラーレ・エボルツィオーネが登場。エボルツィオーネⅡは、エボルツィオーネの発展型として1993年に誕生した究極モデル。1986年のデビュー時に165psだった2リッターエンジンは、エボルツィオーネⅡでは50psアップして215psに強化されていた。

 1993年、デルタはフルモデルチェンジし、2代目に切り替わる。しかし、エボルツィオーネⅡは根強い人気に支えられ、継続生産された。そして1995年に登場したコレツィオーネ(限定250台)によって、惜しまれつつ栄光の歴史に終止符を打った。

【20世紀名車】WRCを席巻したラリースペシャリスト、’94ランチア・デルタHFインテグラーレEVO2の華麗なる世界
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)
【20世紀名車】WRCを席巻したラリースペシャリスト、’94ランチア・デルタHFインテグラーレEVO2の華麗なる世界
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

 取材車は、1994年式のエボルツィオーネⅡ。真紅のボディはまさにマシンの雰囲気。角度調整式のリアスポイラーは、ダウンフォース重視の垂直に近い角度にセッティングされていた。室内のカラーは明るいベージュ。アルカンターラ張りレカロ製バケットシートのサポート性は素晴らしい。さぁ、走るぞ! という気分になる。

 パフォーマンスは刺激的だった。WRCで6連覇を果たしたチャンピオンマシンのベース車だけに、すべてが刺激的。215psを発生する2リッターターボは回すほど明確にパワーを増し、小柄なボディを豪快に加速させる。ハンドリングもハイレベルだ。ホットな走りが堪能できる4WDスポーツの代表である。

1994年ランチア・デルタHFインテグラーレEV02 主要諸元

【20世紀名車】WRCを席巻したラリースペシャリスト、’94ランチア・デルタHFインテグラーレEVO2の華麗なる世界
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

モデル=1994年式/デルタHFインテグラーレEVO 2
全長×全幅×全高=3900×1770×1360mm
ホイールベース=2480mm
車重=1340kg
エンジン=1995cc直4DOHC16Vターボ
エンジン最高出力=215ps/5750rpm
エンジン最大トルク=32.0kgm/2500rpm
トランスミッション=5速MT
サスペンション=前後ストラット
タイヤ&ホイール=205/45ZR16+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=4名

【20世紀名車】WRCを席巻したラリースペシャリスト、’94ランチア・デルタHFインテグラーレEVO2の華麗なる世界
(画像=『CAR and DRIVER』より 引用)

Writer:森口将之 Photo:小久保昭彦/提供元・CAR and DRIVER

【関連記事】
「新世代日産」e-POWER搭載の代表2モデル。新型ノートとキックス、トータルではどうなのか
最近よく見かける新型メルセデスGクラス、その本命G350dの気になるパワフルフィール
コンパクトSUV特集:全長3995mm/小さくて安い。最近、良く見かけるトヨタ・ライズに乗ってみた
2020年の国内新車販売で10万台以上を達成した7モデルとは何か
Jeepグランドチェロキー初の3列シート仕様が米国デビュ