良いサイクルに入っている

 テーマパーク経営に詳しい明治大学経営学部兼任講師の中島恵氏はいう。

「バブル期に近鉄グループが約800億円(うち200億円はホテル建設)をかけてつくったテーマパークということもあり、建物をはじめ施設としては非常に質が高く、決して実力がないわけではなかった。ただ、人口集積地から遠いというアクセス面の難があり、関西圏の人もテーマパークに行くとなると東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に流れてしまう。また、宣伝力が弱くて話題性に乏しいという点も重なり、人を集められない状況が続いた。

 来場者が増えるきっかけとなったのが、2022年からスタートした人気VTuber・周央サンゴとのコラボ。日本に『推し活』文化が定着したこともあり、おひとりさま客を含めて多くのサンゴファンが来場するようになり、アトラクションやサンゴとのコラボグッズ、フードなどの情報をSNS上で発信したことで、もともとスペイン村に備わっていた魅力が多くの人に伝わっていった。今の若者層は食べ歩きであるフードツーリズムを重視する傾向があり、特にサンゴさんがチュロスを絶賛したり、食べ物が非常に美味しく充実しているという評判が広まったことも集客を後押ししている。

 ちなみに一人で来場してアトラクションには乗らずにショップでサンゴ関連グッズを購入するという客も少なくないようで、今では“一人USJ”“一人ディズニーランド”という行動をする人が珍しくなくなったという消費者のトレンドも好材料といえる」

 追い風となっているのが、近鉄グループが志摩観光ホテル、賢島宝生苑、賢島カンツリークラブ、志摩マリンランドなどを展開する伊勢志摩エリアにおけるレジャー事業に力を入れ始めてる点だ。近鉄グループホールディングスは近畿日本鉄道沿線の重要観光地である伊勢志摩エリアの活性化に注力するため、23年に中間持株会社の近鉄レジャークリエイトを設立。地域と協働しながらレジャーをはじめとしたグループ事業の強化および連携を推進することで、エリア全体の魅力やブランド力の向上に貢献するとしている。

「近鉄は志摩スペイン村のパスポート引換券と近鉄電車のフリー区間(松阪~賢島)の乗り放題券、三重交通バスの志摩スペイン村までの往復乗車券などがセットになった『志摩スペイン村 パルケエスパーニャ・フリーきっぷ』や、志摩スペイン村のパスポートや近鉄電車・三重交通バスのフリー乗車券、伊勢神宮と伊勢志摩近鉄リゾート各ホテルを結ぶパールシャトルの乗車券、多くの店舗で特典サービスを受けられるパスポートが付いた『まわりゃんせ』を販売し、伊勢・鳥羽・志摩エリアの活性化につながる取り組みを行っている。地域経済に波及効果が出れば地域との連携も深まり、さまざまな面で協力を得られるようになり、それによって志摩スペイン村の集客力が高まれば地域に雇用が生まれるという、良いサイクルに入りつつある。

 今後、近鉄グループが宣伝に力を入れ、周辺地域と志摩スペイン村が一体となってさらに集客力を高めれば、新たなアトラクションの設置やショー・パレートの充実に投資ができるようになってくるだろう」(中島氏)

(文=Business Journal編集部、協力=中島恵/明治大学兼任講師)

提供元・Business Journal

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