南カリフォルニアの海辺にて、”ミニ・シャーク(mini-shark)”と通称される生物が、海水浴客の足を噛み漁る事例が多発しています。
米ワラワラ大学(Walla Walla University)によると、この生物は「ヒメスナホリムシ(Excirolana chiltoni)」という甲殻類の等脚(とうきゃく)目に属し、砂浜や浅瀬に潜んでいます。
体長6〜8ミリと非常に小さいのですが、強烈な噛み力を持っており、噛まれると、針に刺されたような痛みと出血を伴うという。
そして今、カリフォルニア沿岸部のヒメスナホリムシの数が、何らかの理由で激増し、噛みつきの被害が拡大しているようです。
群れに襲われると、足全体が血に染まることも
ヒメスナホリムシは、アメリカやカナダの西海岸で一年中見られ、日本にも広く分布しています。
現在、ヒメスナホリムシによる被害が拡大している地域は、カリフォルニア州南部・サンディエゴ近郊の海岸部です。
実際に噛まれたという地元住民のタラ・ソバージュ(Tara Sauvage)さんは、取材に対し、「足全体が血まみれで、まるで小さなピラニアに噛まれたようでした」と話しています。
ただ、大事には至らず、水で足を洗い流した後、痛みは15分から20分ほどでおさまったと付け加えました。
ヒメスナホリムシに毒性はなく、噛まれると浅い傷ができるものの、何らかの後遺症が残ることはありません。
しかし、彼らは1000匹以上の群れで行動することがあり、この大群に襲われるとタダでは済まないのです。
その一例が、2017年にオーストラリア南東のメルボルンで発生しています。
当時16歳の少年は、海辺で遊んでいた際に、数千匹ものヒメスナホリムシに両足首をかまれ続けました。
噛まれていることに気づかず、しばらく経って水から上がると、足首から下が真っ赤な血に染まっていたという。
驚いて、血を洗い流してみると、大量のヒメスナホリムシが両足に噛みついていたそうです。
(当時のニュース映像は、記事下に掲載しています)
ワラワラ大学の専門家によると、ヒメスナホリムシの群れは、魚やその他の生物の死骸が浜辺に流れ着くと、いっせいに群がって、その死肉をまたたく間に剥ぎ取ってしまうという。
養殖場では、魚にかじりつくヒメスナホリムシが問題になっていますが、一方で魚類学者は、死んだ魚から骨格を得るために、あえてヒメスナホリムシを使って、腐肉を取り除くこともあります。
しかし、海水浴客が砂浜でこのような大群に襲われることはありませんし、浅瀬でも、たいていは噛まれた痛みにすぐ気が付くので、軽傷で済みます。
その一方で、今回のカリフォルニアでの事例のように、ヒメスナホリムシの個体数が突発的に増加する理由はわかっていません。
過去には、1993年に、カリフォルニア州ニューポートビーチ付近で同様の被害が急増しましたが、ヒメスナホリムシが増えた原因は不明です。
米スクリップス海洋研究所(SIO)の生態学者で、何度もヒメスナホリムシに噛まれた経験のあるライアン・ヘチンガー(Ryan Hechinger)氏は「噛まれた場合は、とにかくパニックにならないことです」と指摘。
「足元に痛みを感じたら、すぐに海から上がり、ヒメスナホリムシが付着したままであれば、取り除くだけでよい」と話します。
また「動き回ることでヒメスナホリムシを遠ざけることも可能ですが、絶対に噛まれない唯一の方法は、海辺に近づかないことくらいでしょうね」と付け加えました。
そろそろ海水浴も終わりのシーズンですが、海に行った際はご注意を。
参考文献
Swarms of ‘mini-shark’ beach bugs are on a foot-biting rampage in California
提供元・ナゾロジー
【関連記事】
・ウミウシに「セルフ斬首と胴体再生」の新行動を発見 生首から心臓まで再生できる(日本)
・人間に必要な「1日の水分量」は、他の霊長類の半分だと判明! 森からの脱出に成功した要因か
・深海の微生物は「自然に起こる水分解」からエネルギーを得ていた?! エイリアン発見につながる研究結果
・「生体工学網膜」が失明治療に革命を起こす?
・人工培養脳を「乳児の脳」まで生育することに成功