トランプ陣営はハリス氏への選挙対策を練ってきたが、メディアを通じて聞こえる声は、ハリス氏は有色出身だ、左翼でリベラルな政治家だといった一辺倒な批判に終始。バンス共和党副大統領候補者の「子供を産まない女性は・・・」といった類の過去の発言まで報じられているが、それ以上ではない。ハリス氏がワルツ民主党副大統領候補者とともに社会的政策、移民問題などで有権者に語り掛けている中、トランプ氏やバンス氏からは民族的な出自や「ハリス氏は馬鹿だ」といった中傷レベルの批判だけしか聞こえない(「バンス氏『家庭の崩壊』に警鐘鳴らせ!」2024年7月30日参考)。

トランプ陣営の選挙戦に危機を感じたのはニッキー・ヘイリー女史だ。元米国連大使で共和党大統領候補者として最後までトランプ氏と戦った女史は「トランプ陣営は選挙戦略を変えるべきだ」と忠告している。ヘイリー女史は右派系テレビ局フォックス・ニュースで、「ハリス氏がどの人種に属するかや、彼女が愚かだと批判することで選挙に勝つことはできない。アメリカ人は賢い人々だ。彼らに対して賢い人々として接するべきだ」と訴えているのだ。

バイデン大統領が11月5日の選挙での立候補を辞退し、民主党がハリス氏を新たな大統領候補として団結した後、トランプ陣営は選挙戦で守勢に立たされてきた。いくつかの世論調査では、ハリス氏がトランプ氏を上回ってる。この焦りがトランプ側にハリス氏への中傷・誹謗発言となってきているわけだ。

ヘイリー氏はフォックス・ニュースとのインタビューで、共和党に対し、選挙戦の変革を訴え、「共和党はハリス氏について愚痴を言うのをやめるべきだ」と述べている。この批判はトランプ氏に向けられたものだ。

ヘイリー氏は「ハリス氏が税金を引き上げようとしている事実を指摘し、ハリス氏との政策論争を求めるべきだ」と注文している。例えば、ハリス氏はワルツ氏を副大統領候補者に選んだが、ポーランドの日刊紙「Rzeczpospolita」は、「ミネソタ州知事である彼は、典型的なアメリカのリベラルとは程遠い存在だ。これにより、民主党の大統領候補であるハリス氏の極左的なイメージが和らぐ。ワルツ氏の選択は、中道派リベラルや中道派保守派の有権者が多い中西部の州、伝統的に共和党候補を支持するこれらの州に向けた賢明な一手だが、ワルツ氏が2008年にこの地域の基盤である重工業への補助金に反対したことを、『ラストベルト』と呼ばれる地域の有権者たちは決して許さないだろう」と報じている。共和党が追及できるテーマは山積しているのだ。