日産自動車、ホンダ、三菱自動車は2024年8月1日、3月15日に日産とホンダが締結した、自動車の知能化・電動化に向けた戦略的パートナーシップに関する覚書に基づく、検討枠組みに三菱自動車も参画し、3社で協議を進めることについて覚書を締結した。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

言うまでもなく、この背景にはソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)のための車両OSの開発と、3社での共通化、EV、PHEVなど電動化技術での主要コンポーネンツの共同開発であり、共通化により開発スピードのアップ、コストダウンを図ることが狙いだ。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

これまでにトヨタは次世代車両OSとしてソフトウェア・プラットフォーム「Arene(アリーン)」を開発しており、このOSはスバル、マツダも採用すると予想されている。ただ、Areneは、当初は自動運転技術のための電子プラットフォームの意味合いが大きかったが、その後にSDVのためのプラットフォームへと方向転換しており、2026年に市場投入という計画ではあるが、開発は難航していると推測される。

グローバルで見ると、すでにSDVの実現は必達目標になっており、各自動車メーカーは全力で開発に取り組んでいる。その中で中国メーカーはいち早くSDVを実現したトップランナーとなっているが、その一方でヨーロッパはフォルクスワーゲン・グループのソフトウエア開発子会社「CARIAD」は開発に手こずり、計画より相当に遅れを取っている。

既存の自動車メーカーにとってOSを開発するハードルは高く、Google、マイクロソフトなどとの協業も選択肢となっている。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

日産自動車、ホンダ、三菱自動車の協業は、SDVのためのOS開発と共通化を目標に、開発のスピードアップ、開発コストの低減をはかることができるだけでなく、EV、PHEVの投入に関してもコストの低減、効率化などを実現することができる。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

日産とホンダは3月15日の協業の検討開始以降、両社のエンジニアが様々な分野で協業の可能性を検討してきたが、8月1日に次世代ソフトウェアデファインドビークル(SDV)向けプラットフォームの領域で、基礎的要素技術の共同研究契約を締結した。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

次世代SDVプラットフォームは、基礎的要素技術の共同研究を行なうことで合意し、すでに研究をスタートしている。まず1年をめどに基礎研究を終えることを目指し、成果が出ればその後量産開発の可能性を含めて検討するとしている。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

また、電動化においても協業化を検討し、実現化を進めている。まずはEV、PHEV用のバッテリーだ。駆動用バッテリーは高コストであると同時に、供給メーカーが限られているためどのように調達するかが課題になっている。

バッテリーは、両社間での仕様の共通化、相互供給など、短期および中長期的な観点での協業範囲を検討している。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

両社のバッテリー技術や調達システム、個社の投資負担やリスクの分散や、ボリュームメリットによるコストダウン効果のみならず、高出力型から廉価型まで、幅広いバッテリーの選択肢を持つことが可能になるとしている。

グローバル市場の視野で、両社がそれぞれ供給を計画しているバッテリーが、どちらの車にも搭載できるようにすることを目指し、両社のEV向けバッテリーセル・モジュールの仕様について、中長期視野で共通化を図ることに基本合意した。

ホンダとLGエナジーソリューションとのL-H Battery Company, Inc.(アメリカ)で生産されたEV用リチウムイオンバッテリーについて、2028年以降北米で日産へ供給することを検討している。またホンダはカナダで生産を計画しているバッテリーに関しても日産への供給の可能性も検討されるだろう。

さらにEVのためのe-アクスルも共通化を目指している。両社の次世代EVに搭載を予定しているe-アクスルについて、中長期的に仕様の共通化を目指していくことに基本合意。その第一ステップとして、e-Aアクスルの基幹領域となるモーター、インバーターを共用していくことで合意した。これにより、調達コストの低減、開発リソースの低減を図ることができるわけだ。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

現時点で、日産とホンダは車両の相互補完、つまり相互のOEMモデル化も検討されている。グローバルでそれぞれ販売するモデルについて、短期から中長期的な視野で車両の相互補完を検討。短期的な対応として、相互補完の対象とするモデル・地域に基本合意するとともに、両社合同での商品検討体制などのアウトラインに合意した。相互補完のモデルは、ガソリン車やEVなどを検討している。

これは、両社にとって車両の車種ラインアップの拡大、不採算モデルの収益性を向上されるなど大いにメリットがあると考えられる。

【重要】日産、ホンダ、そして三菱が戦略的パートナーシップによりOS開発、e-Axleの基幹部品共通化等に合意
(画像=『AUTO PROVE』より 引用)

また、EV、PHEVなどの国内のエネルギーサービス、資源循環領域でも協業が行なわれる。充電施設やサービス、エネルギー機器やバッテリーを活用したエネルギーサービス、など国内におけるエネルギーサービス、資源循環領域(リサイクル)についても、協業の可能性を検討していくことに合意している。

現在、日産はアメリカ市場での販売不振が深刻化しており、同時に中国市場での大幅な減速、さらにタイ市場でも今後苦戦が予想されているなど、経営的に極めて困難な状況にある。ホンダは中国市場での減速、タイ市場でも危機感が高まっている。また、三菱は最重要マーケットであり生産拠点であるタイ市場で暗雲が漂っている。

日本の自動車メーカーの牙城であったタイでは、EV化を推進しEVの販売は急拡大しており、中国の自動車メーカーはすでにタイ政府の協力を得てEV工場を稼働し始めている。中国市場でのEV、PHEVの急拡大の反面で日本車の販売が急減速しており、日本のメーカーの一大生産拠点であるタイでも猛烈なスピードでEV化が加速しているのだ。

このように3社ともに経営的なリスクを迎えており、こうした状況化でSDVのためのOS開発、EV、PHEVの展開を行なうためには負担が大きすぎるので、協業の拡大は必然というべきであろう。

提供・AUTO PROVE

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