スキマバイトのサービス「タイミー」の利用者が増えるなか、タイミーのワーカーのうち60代以上が5%を占め、毎日のように働く人もいるという。また、タイミーを採用活動の手段として使い採用コストを大幅に削減する企業も出てきており、タイミーの普及が既存の転職支援サービスや人材派遣サービスの領域を侵食する可能性も指摘されている。

 タイミーは当時、立教大学の学生だった小川嶺社長が2017年に創業。18年に「タイミー」のサービスをリリースし、創業2年後の19年には20億円の資金調達に成功。21年度には伊藤忠商事やKDDIなどからも出資を受け、登録者数は右肩上がりに増加。現在の登録者数は約770万人、求人の事業所数は約25万4000拠点に上る。特に求人の事業所数ベースでは、競合サービスの「メルカリ ハロ」(約5万店舗)、「シェアフル」(約5万社)を大きく引き離す。

 タイミーの特徴としては、働きたい人がアプリを使って瞬時に仕事を確保することができること。日時・時間を指定して数時間だけの単発のアルバイトを見つけられ、一般的なアルバイト募集で必要な履歴書の提出や面接などが不要で、早ければ当日働くことが可能。さらに即日に報酬を受け取ることができる。

 一方、求人を出す企業側のメリットとしては、求人の掲載料金が無料である点だ。一般的に求人サイトの掲載料は1件あたり約10~15万円ほどといわれており、採用に至らなかったとしてもコストが発生するが、タイミーは採用が成立した場合のみ、企業はワーカーに支払う報酬の30%を手数料としてタイミーに支払うかたちとなる。また、タイミーはサービスを利用して働いたワーカーを事業者が正社員として雇用することを許しており、正社員登用をサポートするサービス(「タイミーキャリアプラス」)も提供している。

40代以上が47%

 そのタイミーは先月26日、東証グロース市場に上場。時価総額(公開価格ベース)が約1380億円の大型上場となったことが大きな話題となったが、上場に際し「事業計画及び成長可能性に関する事項」を公表。そのなかでワーカーの属性として40代が23%、50代が19%、60代以上が5%と、40代以上が47%とほぼ半数を占めている点が注目されている。

 飲食店経営者はいう。

「飲食店はそれなりに肉体労働なので高齢者を雇うのは少しためらいがあったが、試しに60代の人を使ってみたところ、まったく問題なかった。20代でも全然使えない人もいるので、結局はその人次第で、年齢は関係ない。その60代の人に話を聞いたところ、毎日のようにタイミーを使って働いていると言っていた。定年退職して時間があり、働かずに収入がないのも何かと不安なので働きたいものの、ずっと会社勤めだったこともあり、もう大きな責任や人間関係のしがらみがある環境では働きたくなかったので、タイミーのようなサービスはありがたいとのこと。事業者側にしてみても、60代以上の人を雇用するのはハードルが高いので、スポットで働いてもらえるというのはありがたい」

 スキマバイトサービスの普及は、40代以上、および60代以上の就労志望者にとってどのようなメリットがあるのか。株式会社UZUZ COLLEGE代表取締役の川畑翔太郎氏はいう。

「これまで雇用する側は『正社員やフルタイムで働けない人はいりません』というかたちで選ぶ立場にあり、労働者に対して力関係が上でした。ですが徐々に人手不足が深刻化してきて、『1人分(フルタイム)で働くのは無理だけど0.1人分なら働けますよ』という人を受け入れざるを得なくなりつつあります。そこで、『0.1でもよいので働いてほしい』という企業と『0.1分余っているので、0.1だけ(=数時間だけ)働きたい』という人をマッチングするタイミーのようなサービスを利用できることは、双方にとってメリットがあります。特に働く側は、たとえば正社員でも余った時間を切り売りして副業をするなど、自分の都合に合わせて仕事をしやすくなりますし、月160時間の労働力を提供できないと採用されなかった状況から『月に数時間だけなら働けますよ』という人でも仕事を得られるようになります。

 また、60代以上の人はフルタイムの形態では企業に雇用されにくいという現実がありますが、スキマバイトであれば企業側も雇用するハードルが下がるため、働きたい人が仕事を得る機会が広まります。40~50代は、自身の経験を活かせる職種に転職しようとした場合、年収500万円相当くらいの仕事のパフォーマンスしかないのに年功序列のおかげで年収800万円をもらっていた人が、志望する企業から年収500万円ほどしか提示されずにミスマッチが生じて採用に至らず、働きたい人も働けないし、働いてほしい企業も雇用できないというケースが多いです。スキマバイトのサービスを利用することで、そのようなミスマッチが減る可能性があります」