SIMロックは2021年10月に原則廃止されましたが、その歴史は2015年頃まで遡ります。2015年にSIMロック解除が原則義務化され、2019年の「通信と端末の分離」政策が廃止の決定打となりました。これにより、消費者は異なるキャリアの端末を簡単に利用できるようになりました。
しかし、SIMロック解除の義務化から約10年が経過し、その影響を再考する必要があります。スマートフォンの大幅な値引きや、キャリア独自のサービス、個性的な機能が減少した背景には、SIMロック禁止が関係している可能性があります。
「SIMロック」がそもそも長年、問題視されてきた理由とは?
SIMロックは、キャリアが自社の通信サービスにのみ接続できるよう端末を制限する仕組みです。このため、消費者はキャリアを変更する際に新しい端末を購入しなければならず、ユーザーの選択肢を狭めるとして問題視されていました。
消費者の端末選びの選択肢を制限していた
SIMロックがかかっていると、基本的にスマホを購入したキャリアでしか通信プランを契約できません。つまり、他社のサービスに魅力を感じても簡単に乗り換えることができませんでした。
キャリアにとっては消費者を囲いやすくなりますが、消費者にとってはキャリアを変えにくい原因に。
もっとも、各キャリアは大幅な割引を提供することで新規契約者を獲得することを試みてもいました。その典型例が、従来のいわゆる「0円スマホ」「1円スマホ」。その他にも、数万~10万円以上のキャッシュバックキャンペーンが展開されるなど、ユーザーの囲い込み合戦が行われました。
キャリアの乗り換えのハードルの高さを、キャンペーンの競争力で補うという点で「0円スマホ」「1円スマホ」は意味があるものだったと言えるかもしれません。
そして、SIMロックの原則禁止はこのような度を越えたキャンペーンの規制の意味もありました。見方を変えると、SIMロックがあるからこそ、キャリアは一度取り込んだユーザーがなかなか離れないことを知っていてこうした新規契約者の獲得に動いていたと見ることもできます。
ちなみに「1円スマホ」への規制はSIMロック禁止以外の形でも進んでいます。総務省が2023年に発表した「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」では値引きが原則4万円までと規制され、実質的に1円スマホが禁止に。総じて2024年現在は過去と比べ、お得にスマホを手に入れられる機会も少なくなったと言えます。
2019年に定められた「通信と端末の分離」が決定打に
そして2019年、総務省は「通信と端末の分離」を義務化。これは通信サービスと端末の販売を明確に分離することを目的としたもの。過度な端末割引の禁止やSIMロック解除の義務化などが盛り込まれ、SIMロックの撤廃の決定打ともなりました。