アゴラに珍しくリフレ派の記事が出ていると思ったら、自民党の長島昭久議員だった。今回の株暴落では、経済の専門家にはこういうコメントはなくなったが、いまだに国会議員がこのレベルの認識では困るので、超簡単に解説しておこう。
デフレと不況を混同する政治家が支離滅裂な政策をもたらす【新着記事】長島 昭久: 「デフレ脱却」の最大チャンスを潰してはならない! DvDhEEhA #アゴラ
— アゴラ (@agora_japan) August 12, 2024
まず「デフレ脱却」の意味がわからない。「デフレーション」には物価下落以外の意味はない。今年6月の消費者物価上昇率(コアCPI)は2.6%で、34ヶ月連続で日銀のインフレ目標2%を上回った。これは堂々たる物価上昇であり、デフレではない。
ではなぜ政府がいまだに「デフレ完全脱却をめざす」というのか。それは日銀がインフレ目標を達成したといわないからだ。なぜ日銀が達成したといわないのか。そうすると利上げする必要があり、それは株価下落などのリアクションを起こし、政治家が怒るからだ。
政府は「デフレから脱却できていない」はずなのに物価高対策と称してガソリンに補助金を出している。物価高は英語でinflationである。いったい今はデフレなのかインフレなのか。こんな支離滅裂な政策が続いている原因は、長島氏のようにデフレと不況の区別もつかない政治家が多いからだ。
今年1~3月期のGDP成長率がマイナスになったのはデフレではなく、インフレと不況(需要不足)の同時進行するスタグフレーションである。これは1970年代ほど深刻ではないが、こういうときはまずインフレを抑制して総需要の回復を待つしかない。財政出動すると、インフレ(あるいはバブル)が深刻になるだけだ。
黒田日銀の過剰流動性が世界にバブルの種をまいた今回の株価暴落で世界の多くの専門家が指摘したように、その最大の原因は、黒田日銀が10年間にわたってばらまいた過剰流動性である。それは国内の資金需要をはるかに上回るため、行き場をなくしてほとんどが海外投資に使われたのだ。