ロシアのクルチャトフ市では、クルスク原子力発電所の近くで停電が発生した。変電所がウクライナのドローンの破片により被弾したという。クルスク地域では、ウクライナ部隊が数日間にわたり攻勢を続けている。モスクワの情報によると、最大千人のウクライナ兵と20台以上の戦車や装甲車両が参戦。ロシア保健省によれば、この攻勢で66人の民間人が負傷した。

ロシアのメディアによると、首都モスクワ南方リペツク州の空軍基地にウクライナ軍の大規模なドローン攻撃があった。リペツク州はクルスク州に隣接。モスクワまでも約400キロと比較的近い。空軍基地はウクライナ空爆の拠点の一つだ。イーゴリ・アルタモノフ知事は、リペツク市の郊外にある4つの集落に対して避難命令を出した。

クルスク州当局は7日、非常事態を宣言した。プーチン大統領は同日の政府会議の中で、ウクライナのゼレンスキー政権による大規模な挑発だと非難し、軍・治安機関幹部と緊急会合を開催している。

ウクライナ軍のクルスクへの進撃について、①和平交渉で有利な立場を得るためにロシア領土を占領することを目的としたもの、②ロシアが自国領土を防衛するためにウクライナの他の地域から部隊を引き抜かざるを得なくすることで、ドンバスなどでウクライナ防衛側の状況が改善するためだ。

また、クルスク原子力発電所を占領し、ロシア軍が占領しているウクライナのザポリージャ原子力発電所と交換するという考えもあるが、クルスク原子力発電所は国境から約80キロメートル奥に位置しており、ウクライナ軍はさらにロシア領内深くまで進む必要があるから、非現実的だ。なお、ロシア国家親衛隊は同原発の警備を強化したという。

いずれにしても、ウクライナ軍のクルスク進攻は、プーチン大統領とその軍事指導部にとって想定外だったろう。戦闘は今やロシアの領土で行われており、滑空爆弾、砲弾、ミサイルがロシアの村々に落ちている。もはや「特別軍事作戦」では国民を納得させることが出来ない。プーチン大統領はこの屈辱を拭い去るためにあらゆる手段を講じるだろう。