日本最大の野生動物であるヒグマの生態や行動、もしもヒグマに遭遇したら…という最悪の事態に備えてのヒグマ対策、さらにヒグマに会わないために注意するべき事など、ヒグマのコトをまるっとお伝えします!
目次
日本最大の野生動物、北海道のヒグマを知る
2021年現在、北海道はヒグマの話題で持ちきりです。各地ニュースで日々取り上げられるヒグマ被害を見聞きするたびに背筋の凍る思いです。クマは比較的温厚な性格だと耳にすることもありますが、実のところどうなのでしょう?
ヒグマについての知識を持つ
ヒグマのことを知ることは大切なことです。
正しい知識を持ち得ることで、いざという時に必ず役立ちます。
ヒグマの生態
世界規模でみると、ヒグマの生息地は北半球に広く分布しています。
国内ではヒグマは北海道にのみ生息している、食肉目クマ科のクマです。
また、ヒグマは日本国内で最大の陸上動物でもあります。
ヒグマは雑食性の動物です。
地域にもよりますが主に木の実や果実など、植物性の食べ物を主食としています。
視力は良く、聴覚が発達しているため音に敏感です。
加えてヒグマは嗅覚も優れていて、食べ物の匂いを嗅ぎ分けることができます。
ヒグマの平均胴長は約2~3メートル。
平均体重は約200~400キロにも及ぶ大型のクマです。
これは成人男性のおよそ6倍にも及びますので驚きです。
巨大な体格に比較的大きな頭部、肩にこぶを持つのがヒグマの特徴です。
そんなヒグマの寿命は野生で25年程とされています。
ヒグマの性格
ヒグマの性格を3つあげてみます。
- 好奇心が旺盛
- 物(クマの所有物)に対しての執着心が強い
- 臆病
などが挙げられます。犬や猫でも言えるように、ヒグマにも個体差があります。よって一概に性格を判断することは難しいかもしれません。「2」のクマの所有物ですが、例えばここに人間の持ち物であるリュックサックなども入ります。人間のもっていた物がクマに取られたとしても、決して取り返そうとしてはいけません。
また、ヒグマは学習能力が高いことでも有名です。ヒグマは一度狙った獲物をいつまでも記憶していると言います。
ヒグマの行動
クマは基本的に冬眠をする動物です。ヒグマの冬眠期間は12~3月頃となります。
ヒグマの雄と雌は繁殖時期以外は共に行動をすることはありません。母親グマは平均1~3頭の子どもを産んで育てます。子育て中に、空腹の雄グマから子どもを守る母グマがいるように、クマたちは共食いをおこなう動物です。
臆病な性格を持っているヒグマですが、人間の食べ物など、一度味わった味を忘れられず攻撃的になることがしばしばあります。夕方や早朝に行動するヒグマが多いですが、近年では時間を問わず出現する個体も出てきています。
またヒグマは約400キロの巨体であるにも関わらず、時速50㎏で走ることが可能です。
どんなに足の早い人間でも簡単に追いつかれてしまう速度です。
ヒグマに会いたくない!ヒグマに出会わないための対策
野山でヒグマに遭遇しないためにも、人間が居ることをクマたちに知ってもらうのが何よりも大切です。ヒグマは人間を恐れていることが多く、ふつう人間の存在に気付いた時点で逃げていってしまいます。彼らヒグマは聴覚が非常に優れていますので、人間の足音や話声に反応して、人間の存在を察知してくれる可能性があります。
鈴をつけて音を出す
野山に入る際にはヒグマ対策として、必ず音の出るものを持っていきましょう。
リュックや手首にクマよけの鈴を付けておくことをおすすめします。
また、野山に入る際は複数人で行動するように心がけ、手などを鳴らしてクマに人間の存在を教えるのも効果的です。
電子ホイッスルなどもあるので、鈴のみでは不安と思った方はこちらも併用して持ち歩くと良いかもしれません。
時間帯に気を付ける
ヒクマは昼行性ですが、彼らは人間に姿を見られない時間帯である夕方や早朝に行動することが多いです。薄暗い時間帯に野山に入るのは危険ですのでやめましょう。
また、雨の日なども危険です。雨音によりクマが人間の存在に気が付きにくくなっています。雨の日や、周囲が薄暗い場合は日を改めたほうが賢明と言えるでしょう。
アウトドアのゴミは必ず持ち帰ろう
先程クマの聴覚のお話をしましたが、ヒグマは聴覚のみならず嗅覚においても鋭敏です。
余った食べ物やゴミは必ず持ち帰るようにしてください。
匂いが強い食べ物にヒグマは反応を示します。
テントに食べ物を入れておくのは大変危険です。
さらに、食べ物の残りを土に埋める等の行為も危険です。ヒグマが人間の食べ物の味を覚えてしまい、次もまた人間の持っている食べ物を欲するようになります。その結果として、人間に対して凶暴な行動を取るようになってしまいます。
これを見たら引き返す!
- ヒグマの糞
- ヒグマの足跡
- エゾシカの死骸
上記のものを発見した場合はすみやかに引き返しましょう。ヒグマが近くにいる可能性が高いです。
決まった道を通るヒグマたち
ヒグマには頻繁に利用している「通り道」があります。ヒグマは季節が変わる毎に場所を変えて行動する動物です。ヒグマの利用する道を把握しておくことで、ヒグマとの遭遇率を下げることも一つの策です。
体長3メートルぐらいのヒグマに遭遇したら・・・を考える
もしも北海道でヒグマに出会ったら、あなたならどうしますか?
「そんなこと突然聞かれても…」と困り顔になってしまう事と思います。
しかし、突如として目の前に現れるのがヒグマというものです。
ここでは、大型ヒグマに遭遇した場合を想定し、どのような対処をすればいいのか考えていきます。
ヒグマに会ったら「死んだふり」は嘘だった?
ヒグマに遭遇したというだけであれば「死んだふりをする」のはNGです。死んだふりは、効果がないとの報告が相次いで発表されています。
ただし、ヒグマがあなたへ襲い掛かってきた場合は、急所を守るための姿勢を取る必要があります。ヒグマに襲われた時の防御姿勢は以下の画像でも分かる通り、
- 地面にうつ伏せになり顔や腹部を守る
- 急所である首を守るために、首の後ろへ両手を回して保護をする
- バックパック(リュックサック等)は背負ったままで
- ヒグマに転がされても、再度同じ姿勢に戻るようにする
続いて、下記ではどのようにしてヒグマを"やり過ごすのか"をお伝えしていきます。
ヒグマに遭遇【子グマ編】
子グマが可愛くて、つい…と近寄って写真を撮ろうものなら最後、近くにいる親グマに襲撃されてしまいます。
子グマ一頭だけがあなたの視野に入ったとしても、子グマの近くには必ず母親グマがいますのでむやみに近づいてはいけません。
子グマを見つけた場合は、すみやかに後退します。
ヒグマに遭遇【遠距離編】
100メートル以上の距離がある場合で、なおかつヒグマがあなたに気付いていない場合は、ヒグマの様子をうかがいながら、なるべく静かに、ヒグマから目を離さずに、ゆっくりとその場所から離れるようにしてください。
自分よりもはるかに大きな黒いヒグマとの遭遇に、驚かないはずがありません。
しかしヒグマとの遭遇に慌ててしまい、声をあげて騒いだり、走ってしまうとヒグマを刺激することになり逆効果です。ヒグマを興奮させてしまい危険です。
ヒグマがあなたの存在に気が付いてじっと注視している場合も同様です。
決して焦らず、冷静になり、静かに距離を取ってその場を離れます。
ヒグマに遭遇【至近距離編】
好奇心旺盛なヒグマなど、何らかの要因でヒグマがゆっくりあなたに近づいて来た場合は、大きな岩や木の上に登るか、自分を大きく見せるための工夫をします。
- 背負っていたリュックサックを地面に置いてヒグマの気を逸らす
- 枝を手にして左右へ大きく振り、自分が大きいことをヒグマに示す
- 複数人であれば集まって音を立てる
などの行動を取ります。
クマ撃退スプレーというものがあります。それらスプレーを持参していれば噴射の準備をしてください。
近年では、山奥や川辺などといった地域に限らず、ヒグマは市街地にも出現しています。ヒグマの目撃情報に注意するよう心掛けてください。
春から秋にかけてはヒグマの出没が目立ちます。
不要不急の外出を控えるなどの対策、万が一ヒグマに出くわした時の対策などを家族全体で練ることが重要です。
なぜ今、市街地にヒグマが現れるのか?
北海道札幌市でのヒグマ目撃情報は今年(2021年8月時点)に入ってから126件に上ります。平成28年(2016年)の目撃情報が33件だったのに対して、その差は歴然としています。(札幌市ヒグマ出没情報より引用)
市街地にてヒグマが目撃されるその背景には、1990年を境にクマの駆除を中止した影響が大きいと言われています。1990年以前は「春グマ駆除制度」というヒグマの駆除制度がありました。しかし自然保護の観点から、当時の知事は「本道の豊かな自然を象徴する野生動物」としてヒグマ保護を訴えました。
「春グマ駆除制度」が廃止された現在では、ヒグマの数は増加の一途を辿っています。
またエゾシカの増加により、ヒグマのエサとなる山の植物や果実が不足していることも影響していると思われます。山にエサの無くなったヒグマは里へ下り、市街地までルートを辿ってやって来るというわけです。
最後に・・・
国内最大の陸上動物であるヒグマ、いかがでしたでしょうか?
もし自分がヒグマに遭遇したら…と考えるとやはり怖いですよね。
動物園で見る穏やかそうで、優しい目をしたクマと野生のヒグマは全く違います。
筆者も今回本記事を書くにあたって様々なニュースを拝見し、専門家のお話を拝読しました。現実に現れるクマは想像よりも恐ろしく、人間に対して容赦のないことが分かりました。つまり「ナウシカ的精神で愛でれば、きっと分かってくれる」という相手ではないのです。
ヒグマの噛む力は人間の7倍もあります。腕力だって人間の数十倍です。とても勝てる相手ではありません。
ヒグマのことを正しく知り、落ち着いた対処ができるよう事前に対策を練ることが重要だと改めて実感しました。
この記事が少しでも皆様のお役に立てたら幸いです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございます!
※画像はイメージです。
文・猫目/提供元・北海道そらマガジン
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