外資系コンサル・ベンダ特有の傾向

 22日付「日経クロステック」記事によれば、プロジェクトの当初の完了予定は22年12月であったが延期され1年以上の遅れとなり、投資額は当初の予定金額の1.6倍にも膨れ上がっているという。プロジェクトを任された主幹ベンダが外資系コンサルティング会社のデロイトであることが影響しているとの見方もあるが、森井氏はいう。

「国内ベンダと異なり、一般的に外資系コンサルは自社のやり方でどんどんプロジェクトを進めて、顧客と交わした契約で定めた自社の担当範囲だけに専念する傾向があるため、システム構築の実作業を担う開発会社を含むプロジェクト全体の細かい部分まで、きちんと目配せができていなかった可能性も考えられます」

 金融機関のシステム部門管理職はいう。

「国内ベンダの場合、契約うんぬんに関係なく、顧客側のタスクであっても気になる点や懸念点などがあると『これって大丈夫ですかね』などと言ってくる。それがベンダと発注元の役割分担や責任の線引きを曖昧にしてしまったり、ベンダが契約で定めた以上のボリュームの作業をやらされてしまうというマイナス面を生むことがある一方、結果的に“穴を埋めて”トラブル回避につながるという面もある。一方、外資系ベンダ・コンサルは『自分たちの担当範囲はここまで』とドライに線引きをしてくるし、顧客側の事情で問題が生じた場合は『ではプロジェクトを中止します』『追加費用がかかります』と言ってくるので、発注する側の企業にもそれ相応の高いスキルが必要となる。

 今回の件でいえば、あくまで推察だが、デロイト側は『この作業はグリコ側・開発会社側の担当』と考え、グリコ側は『これはデロイト側がやってくれているはず』と考えて“作業の漏れ”が数多く発生した結果、プロジェクトがうまく回っていなかったのではないか」

 大手SIerのSEはいう。

「デロイトがSAPを使ったシステム開発で豊富な実績を持っていることは事実だが、業態や個別企業の業務実態によってはSAPが不向きなケースもあるし、デロイトに食品メーカーの業務実務に詳しいエンジニアがいたのかどうかという問題もある。また、ベンダに発注する企業側にも、システム開発に詳しく社内で要件を整理したりプロジェクトをマネジメントしつつ、ベンダを管理する能力もある人間が必要だが、グリコ側にそうした人間がおらず、プロジェクト体制がしっかり構築されていなかったという可能性も考えられる。

 日本企業では社内に大規模なシステム開発のノウハウを持っていないところも少なくなく、外部のベンダに頼り切りになってしまった結果、開発が失敗に終わるケースも珍しくない。特に統合基幹業務システムの開発・刷新は社内の複数の部署にまたがり業務そのものを変えていくため大規模かつ難易度が高く、プロジェクトが頓挫するケースもある。

 また、なんだかんだと無理も聞いてくれる国内ベンダとは対照的に、外資系コンサルのベンダはドライなので、プロジェクトの途中で突然中止や『ゼロからやりなおし』を提案してきたり、『これはできない』と言ってきたりと、簡単に梯子を外してくることもある。なので発注する側に企業側にも高いスキルが求められる。グリコに関していえば、延期もしてさんざん時間もお金もかけてしまい、もう引っ込みがつかなくなり強引にリリースまで持ってきたはいいものの、いろいろな部分で不備が発覚して火が噴いているという印象。正常化まではかなり時間を要するのではないかと感じる」(4月26日付け当サイト記事より)

(文=Business Journal編集部、協力=森井昌克/神戸大学大学院工学研究科特命教授)

提供元・Business Journal

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