彼は宇宙の始まりを考えるという今回の研究において、「因果集合理論」と呼ばれるものを採用しました。
あまり聞き馴染みのない理論ですが、「因果集合理論」とはどのような理論でしょうか?
現在の物理学では、時間や空間はなめらかに連続した切れ目や縫い目のない1枚の布のようなものとして捉えられています。
こうした連続した時空では、2つの点は空間的に隙間なく近づけることが可能であり、2つの事象は時間的に隙間なく発生させることが可能です。
しかし、「因果集合理論」では空間と時間をなめらかな連続的につながったものとは考えていません。
この理論では、時空を極限まで分解していくと原子のような離散的(飛び飛びの値で変化する)な塊になると解釈しています。
つまり、時空には最小の基本単位が存在するというのです。
今この記事を読んでいる画面も、なめらかな一枚の画像に見えるでしょうが、当然虫眼鏡などで拡大すれば、それは小さな1ピクセルの画素が並んでいるものだとわかります。
空間も同様に分割されていて、その最小単位以上にはお互い近づくことができないかもしれないというのです。
この考え方の何が重要なのかというと、この理論に従った場合、ビッグバンやブラックホールのような特異点の問題をきれいに取り除くことができるのです。
なぜなら、この理論では時空を無限に小さく圧縮することが不可能だからです。
時空には最小単位の「時空の原子」があり、その大きさを超えて小さくなることはありえないため、特異点が存在しなくなるのです。
では、ビッグバンに特異点がない場合、宇宙の始まりはどのようなものになるのでしょうか?
ビッグバンは通過点に過ぎない
ベントー氏は、因果集合理論が宇宙の最初の瞬間をどのように表現するか、インペリアル・カレッジ・ロンドンのスタブ・ザレル氏と共同で研究を勧めました。