テスラのモデル3が2023年秋にアップデートが行なわれ、2024年4月に「パフォーマンス」グレードが追加になった。今回、そのモデル3 パフォーマンスに試乗してきた。
モデル3は2016年にモデルがデビューし、100万台を超える販売台数を記録。世界で認められたセダンタイプのEVだ。国内でも一定の評価はされており、補助金という形でその貢献度を評価している。
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テスラ モデル3は令和5年度の補助予算CEV補助金が65万円あり、またロングレンジAWDは輸入車の中で数少ない1台となる85万円の補助金になっている。国内の補助金制度評価ではEVの普及に対し、充電設備の拡充や販売台数のほか、アフターサービス、サイバーセキュリティ、そしてライフサイクルでのCO2削減などの施策等の取り組みレベルを評価して補助金額が決まるため、テスラはその貢献度が高く評価されているわけだ。
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そして、2023年のアップデート時には車両価格の引き下げを行なっており、円安であれば高ぶれしそうなものだが、より多くの人にEVを乗ってもらうことでCO2削減に貢献できるとの企業姿勢を反映し、日本での販売価格をさげたものだと説明している。
さて、そのモデル3はDセグメントのプレミアムブランドで、エントリーは531万3000円で補助金が65万円。自治体の補助金も合わせれば、さらに入手価格は下がる。そしてトップモデルとなったハイパフォーマンスは725万9000円でスペックなどからすると破格の価格と言えるのだ。
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ではどんなモデルなのかご紹介しよう。前年のアップデートで、エクステリア、インテリア、そしてパワートレインが変更されている。エクステリアではボンネットとフェンダーが変更され、よりフラットに空気が流れるように空力の観点でデザイン変更されている。インテリアではパフォーマンスに専用のスポーツシートを設定。モニターサイズもベゼルが細くなったことで15インチから15.4インチへとわずかに大きくなっている。
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パワートレインではフロントモーターに変更はないが、リヤモーターが変更され出力が上がっている。フロントモーターは瞬間的な大トルクを発生させることが得意とされるインダクションモーター=誘導モータ=非同期モーターで、リヤはエネルギーロスが少ないとされるPMモーター=同期モーターを搭載。システム最大トルクは659Nmから723Nmへとアップしている。
これに伴い0-100km/h加速が3.3秒から3.1秒へと向上している。このアップデートではバッテリーサイズは変更なく空力向上とリヤモータートルクのトルクアップで向上している。ちなみにバッテリーサイズは公開していないものの74.2kWh程度と言われている。そして航続距離も605kmから610kmへと伸びている。つまり、バッテリー容量を変更しないで、航続距離を伸ばしているのだ。
このパフォーマンスグレードには専用のサスペンションも装備されていることも見逃せない。アダプティブダンピングシステムは電子制御されるダンパーで、ミリ秒で制御され、街乗りからワインディング、そしてサーキットに対応するレベルのサスペンションになっている。ちなみにフロントがWウイッシュボーンでリヤがマルチリンクのレイアウトは変更なしだ。
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さて、このアップデートされたパフォーマンスモデルを走らせてみると脅威の加速だ。モデル3のホイールには「ワープホイール」という名称が付けられているが、まさにワープの加速。瞬間移動を体験することができる。乗り心地もスタンダード、スポーツのドライブモードではっきりと変化し、スポーツを選択することでモーターの瞬間レスポンスを楽しみ、切れ味鋭いハンドリングでコーナーをクリアする走りが楽しめるのだ。そしてスタンダードを選択すれば、静粛性の高いセダンとしての居住性が提供される。
じつはこのダイナミック性能の凄さや楽しさといった魅力のほかに、これまで常識とされてきたものが変わっていくのもテスラモデル3の魅力だと感じた。
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車両のキーはカードキー、ないしスマホアプリを登録するとスマホがキーになる。スマホを持って車両に近づけばロックが解除され、離れれば自動ロックされる。ドアハンドルはボディとツライチだが、近づくことでハンドルが競り上がり、ドアを開けて乗り込む。
シートに座るとドライバーモニターが本人確認を行ない、シートベルトをしてブレーキを踏んだ時点で「D」にシフトされる。前方へ移動できない場所ではれば自動で「R」にシフトされる。したがって、シフトレバーがないのだ!エマージェンシーとしてモニター画面の中にシフトポイントは表示されるが、通常であればシフト操作は不要になる。
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そしてアクセルペダルはワンペダル走行のみ。回生エネルギー量を調整するパドルシフトもない。しかし、そのワンペダル走行で違和感があるかと言えば、ないのだ。速度に応じて回生量が変化しているため、高速走行で強い回生ブレーキが発生しない。だから運転のしにくさは感じないというわけ。
さらにウインカーレバーもない。ハンドルにあるスイッチを操作してウインカーを点滅させる。上下に分かれたスイッチは軽く触れると3回点滅して消える。スイッチを押し込むとウインカーは点滅し続けるが、車線変更が終わると、あるいは右左折が終わると自動で消灯するのだ。
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ステアリングコラムポストにはこのウインカーレバーとワイパーやヘッドライトなどのスイッチ類が集約されているレバーがなく、すべてを取り払っている潔さを感じる。その結果いつの間にか「レバーが必要か?」と考えるようになっており、常識の変化が自身の中で芽生える。
音声認識においてもGoogleマップに連動し、かつ、車両に関するコマンドも操作が可能。「暑い」、「寒い」に反応し、曖昧な言葉で目的地を設定してもOKで、会話型になっていることを感じる。
そしてナビにはテスラの充電ステーション「スーパーチャージャー」設置箇所が即座に表示されるアイコンもあり、安心する。また遠距離を目的に設定したとき、目的までに現在の充電量で足りるのかが即座に判定され、不足の場合、充電ポイントがマップ上に出る。そして充電ポイントで15分充電すると目的には残量15%で到着というところまで瞬時に表示されるのだ。
このナビには気温、風速、天気、標高などが加味されており、また車内でスマホを充電した場合目的地までにどの程度駆動バッテリーに影響があるのかも表示される。もちろん、エアコン、ヒーターを使った場合もバッテリーの減り方がわかるのだ。
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高速ではオートパイロットを起動させるが、ハンドルのローラーをワンクリックでACCが起動し、ダブルクリックでACCにプラスしてレーンキープも稼働。その設定はモニター内で変更ができる。そして車間距離の設定も記憶され、次に乗った時には自分のシート位置だけでなくオートパイロットを使った際の設定も自動記憶していく。さらに、スマホを持っていればアメリカに出かけテスラのレンタカーに乗った時も自分のシート位置とオートパイロットも自動設定されるのだ。
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さらに驚くのは国内未対応なのだが、北米では、こうした記憶データを元に翌月の保険料に反映する自動車保険がある。テスラ独自の保険ということだが、速度超過、急ブレーキの回数、深夜走行回数、車間距離の近さなどから安全運転がスコア化され、保険料に反映する仕組みだという。
ちなみにバッテリーの保証は8年または19万2000kmまでいずれか早い方が適用される。
いやはや、さまざまな領域で常識が覆され、本質を突きつけられた気持ちにもなる。安全運転とCO2削減という使命を持ちながら、クルマとしてのエンターテイメント性、さらには移動する車両としての快適性など、全てが楽しく、ワクワクさせるのだ。まさに病みつきのモデル3だった。
価格
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文・高橋 アキラ/提供・AUTO PROVE
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