2013年2月15日、 ロシアのチェリャビンスク近郊で早朝に隕石が落下し空中で爆発・分裂した。隕石の通過や空中での爆発によって発生した衝撃波によっておよそ1,500人の負傷者が出たことで、史上初めて隕石によって人的被害がもたらされた自然災害ともなった。NASAによると、この隕石は大気圏突入前の重さが約7000トン、直径は約15メートルであると推測され、もし分裂せずにそのまま地面へ衝突していれば、100メートル級のクレーターができるほどより大規模な被害が起こっていたのではないかとも言われている。
この隕石落下はその様子をおさめた動画が存在しており、ネットや報道などを通じて人々が目にすることとなったが、その一方である部分に多くの注目が集まったことでも話題になった。問題の映像は、画面左側から眩(まばゆ) い光を放つ隕石が落下していく様子が映し出されている。この映像をよく見ると、隕石が爆発する直前にその後方から謎の光る物体が猛スピードで現れ、隕石に衝突あるいは隕石を貫通するような様子が映し出されていた のである。この直後に、隕石は爆発しいくつもの破片が前方へ飛び散った。
この映像に映る謎の発光体については、いくつもの憶測が飛び交うこととなった。中でも「UFOが隕石を撃墜させたのではないか」という噂はブログなどの媒体を中心として一気に広がり、「ロシアと友好的なUFOが助けてくれた」「UFOが地球を救うために隕石を撃墜した」といった説まで浮上することとなった。このほかにも、「隕石自体が撃墜されたUFOでありそれを軍が迎撃した様子なので はないか」といったものや、そういったものとは関係なく「他国やテロリストによる核攻撃だったのではないか」といったものまでさまざまに飛び交った。また、UFOとの関連が示唆される中で、1908年に同じくロシアで発生した、ツングースカの大爆発との類似性を想起させる者も多く、何かしらの関係があるのではないかとの考察もなされるようになった。
しかし、当然ながら反対意見もある。後方からやってきた発光体が、果たしてUFOであるかについては疑問視する者もあり、そもそもこの動画そのものが捏造であるとの可能性を考える意見も出ていた。一つの有力な説として上がったのは、この隕石に接触した謎の発光体は「ガラスの反射光」 ではないかというものであった。
この隕石落下の映像は、自動車の車載カメラによって捉えられたものであった。つまり、フロントガラス越しに撮られた映像ということだ。映像をよく見てみると、この”UFO”と思しき物体の動きが、画面に映るフロントガラスについた他のいくつかの汚れの動きと、移動向きやスピードが同じなのだ。この発光体は、フロントガラスについた微細な傷に隕石の光が反射して光ったものである可能性が高いのだ。そして、肝腎なのはこの時、自動車が右へカーブしていたということである。前方の景色をバックにカメラが右へ向きを移動させたとき、フロントガラスの汚れや傷は景色に対して左から右へ移動していくように見える。要するに、この隕石に衝突したという発光体は、フロントガラスの傷に反射した隕石の光が、カメラ向きが移動されたことで猛スピードで、しかもちょうどよく隕石に衝突するように映し出された錯覚だったというのだ。
この動画は、国営放送でも大々的に報道され検証されたそうだが、切り抜かれた画質の悪い映像を用いたことが災いしてか、ガラスの傷の反射光といった結論は導き出されることはなかったという。その意味では、検証における資料の質の重要性を、強く意識させられる出来事であったとも言えるだろう。
【参考記事・文献】
ロシアの巨大隕石の空中爆発はUFOが空中で撃墜していた可能性 !?(チェリャビンスク)
「隕石をUFOが破壊した」説は本当か?
ロシアに墜ちた隕石をUFOが爆破したのが映っていた
ロシア隕石のUFOによる追撃は、 ガラス面の透過屈折光に過ぎない
【本記事は「ミステリーニュースステーション・ATLAS(アトラス)」からの提供です】
【文 ナオキ・コムロ】
文=ナオキ・コムロ(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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