火星のテラフォーミングも夢じゃない?

レーダー観測したメデューサ・フォッサエ層の地表。青い部分が氷の場所であり、色が赤いほど厚みが大きい
レーダー観測したメデューサ・フォッサエ層の地表。青い部分が氷の場所であり、色が赤いほど厚みが大きい / Credit: ESA – Map of suspected ice at Mars’s equator(2024)

火星探査はここ数十年で大きく進展しており、”不毛な土地”という以前の火星イメージは劇的に変化しつつあります。

というのも火星の至るところで、かつて水が流れていた痕跡が見つかっていたり、川や湖、海が存在した証拠もあるからです。

「火星は約30〜40億年前には水の豊かな惑星だった」という考えはすでに研究者たちの一致した見解となっています。

その一方で、火星には液体状の水が見つかっておらず、それらがどこに行ったのかは謎のままです。

水蒸気として宇宙空間に消えてしまったのか、あるいは火星のどこかに閉じ込められているのかは分かりませんが、メデューサ・フォッサエ層はその疑問に対する答えを持っているかもしれません。

メデューサ・フォッサエ層の画像
メデューサ・フォッサエ層の画像 / Credit: ESA – Perspective view of Medusae Fossae(2024)

そして研究者たちが、”火星の水のありか”を熱心に知りたがっているのには訳があります。

人類が将来的な火星への移住を実現する際、現地での生存や生活のためには水資源がどうしても不可欠だからです。

そのため火星をテラフォーミングすることを真剣に考えた場合、水資源をいかにして確保するかは必須の問題になるのです。

火星は大量に水のあった痕跡があるため、SF作品などではテラフォーミングされた火星は水の惑星として描かれることもありますが、実際火星にかつて存在した水の行方はよくわかっていないため、研究者たちは火星にはまだ水が残っているのか? あるとしたらどこに保存されているか? という点に非常に興味を向けているのです。

メデューサ・フォッサエ層に眠る氷塊がいつ、どのように形成されたのかというプロセスが分かれば、他にも類似する地形を探すことで、新たな水資源の宝庫が見つかるかもしれません。

このように火星は私たちが想像する以上に、水の豊富な惑星であることが期待できます。

火星で大量の水が確保できれば、飲料水の供給から農業用の水水の電気分解による酸素の生成、さらには動植物の育成など、火星を第2の故郷とするテラフォーミング計画も夢ではなくなるかもしれません。

参考文献

A Massive Amount of Water Ice Has Been Found on Mars, Lurking Beneath The Equator

Buried water ice at Mars’s equator?

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。