サンカとは、山で非定住の生活をしていたとされる人々を指す呼び名である。その発生の由来や文化に及ぼした影響などについては多くの謎が残っており、民俗学でも重要なテーマとして扱われている。のちに里へ定住化が進んだ末に、昭和30~40年代ごろにはほぼ消滅したとされている。
山の民とも呼ばれるサンカについては、その発生時期も諸説紛々としている。江戸時代に税収の取り立てから逃散した農民という説もあれば、戦国時代のスパイ集団「乱破(ラッパ)」「素破(スッパ)」にその関係性をみなす説、古代末期から中世を通じて京都や奈良を中心とした街道の坂道に集住していた坂者(さかのもの)を由来とする説、より遡ると農耕文化を主軸とした渡来の弥生人に追いやられた縄文人ではないかとする説がある。
サンカは、主に竹細工を売ったり農具を修理したりして生計を立てていたと言われているが、忍者やゲリラ戦の傭兵として雇われていたのではないかという意見もある。彼らは、肉食の忌避やタブーであった文化的事情から離れており肉を常食していたということから、男性は背格好も大きく女性は美人も多かったと言われている。また、並外れた運動能力を持っており、それが忍者や傭兵の活動にもつながったのではないかと考えられている。
サンカは文字を持たなかったとされる一方で、独自のサンカ言葉を持っていたという。「バラす」「ホシ」「メボシ」といった犯罪・警察関係の隠語は、盗賊となった一部サンカが使用していたことに由来するとも言われている。またサンカ言葉と能や狂言の世界の隠語が似ているという指摘もあり、これはサンカの一部に芸能をもって投げ銭を得る者もいたことから、影響があったのではないかとも考えられている。
作家の山口敏太郎は、サンカのルーツは海を渡って移動した漂白漁民「家船(えぶね)」にあり、彼らが太平洋を渡りそして川を登って山に入り住み着いたことで、サンカが形成されたのではないかと説いている。
サンカは、ファンタジー色の強いものとして描かれることが多い。しかし、表立った“正史”ではなく、その背後に影を潜め語られずにいる部分にこそ歴史をつなぐカギがあり、サンカこそがその重要な存在となっていることは疑いの余地もない。語ることのできる世代がますます失われていく今こそ、貴重な記録として残していく必要があるだろう。
文=にぅま(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
提供元・TOCANA
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