杉沢村は、かつて青森県に存在したとされる村およびその村にまつわる伝説である。2000年ごろにテレビ番組で取り上げられたことで全国的に知られるようになり、現在までに至る怪村いわゆる村系都市伝説の流行を牽引した先駆けともなっている。
杉沢村伝説の大筋は次の通りだ。昭和初期、人里離れたこの村である日、一人の青年が突然発狂して村人全員を斧で殺害し、自らも命を絶つという事件があった。陰惨な事件ゆえに、この事件そのものを隠蔽しようと考えた自治体の意向によって、村は地図から消し去られた。しかし、地元の老人たちによってこの村の存在は密かに語り伝えられてきたのだという。
また、その村へ続く道中には「ここから先へ立ち入る者、命の保証はない」と書かれた看板が立てられており、入り口には朽ちた鳥居とドクロのような形の石が置かれている。奥へ進むとそこには廃墟と化した住居が立ち並び、事件の惨劇を物語るかのように大量の血痕が残っている。そこでは亡者が村に侵入した人間を襲い、たとえ村から帰ることができても数日後には失踪してしまうという。
杉沢村の伝説は、1995年に弘前大学から発行された伝承についての研究報告書に記録されているものが、現時点最古の記録であるとされている。それによれば、一人の男が村を全滅させ、その跡地に迷い込んだ人間を亡者が襲うという下地がすでに語られており、実際に青森県内で広まっていた話ではないかと考えられている。
杉沢村についてはその所在地が調査されたこともあり、中でも、村は実在したが事件などなく、病気が流行って人が近寄らなくなった結果に消滅したという証言が語られた例も存在する。また、冒頭のテレビ番組でも具体的な所在地は確認できず、「時空の歪みの中に存在し、現われたり消えたりする村である」と締め括られていた。
杉沢村伝説は、凄惨な因縁を持つ怪村の決定的な位置づけもさることながら、所在地が不明という異界譚を思わせるその内容は、後の「きさらぎ駅」や「巨頭オ」といった異界に迷い込んだ体験談として語られるネット怪談にも強く引き継がれているように思える。
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文=にぅま(ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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提供元・TOCANA
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