フィリピンの離島に暮らす“海人部族”とは? 子供は歩けるようになると同時に泳ぎを覚え、遺伝子レベルで海に適応した部族が今、危機にさらされている――。
■遺伝子レベルで海に適応したバジャウ族
フィリピンの離島の1つ、タウィタウィに住むバジャウ(Bajau)族は、驚くべきことに遺伝子レベルで海に適応している。
研究者によると、バジャウ族は平均的な人間よりもはるかに長く息を止めることができ、1日最大5時間も海中にいる。脾臓の独特な変異の結果、彼らの血液はより多くの酸素を含んでいるということだ。
彼らは数え切れない世代をかけてフリーダイビングの技術を磨き上げてきたといい、バジャオ族の子供たちは、歩けるようになると同時に泳ぎを覚える。主食はもちろん海産物であり、文字通りの“海人”と呼ぶべき部族である。
部族の85歳の長老、サンタラウィ・ラリサン氏は昔ながらのやり方に固執し、割れたボトルのガラスをレンズに使った手作りの木製のゴーグルを着けた長時間のダイビングで銛を使って漁をしている。ラリサン氏は父親からダイビングの仕方を教わったと話す。
バジャウ族の村は浅瀬の支柱の上に建てられており、竹竿や流木などを橋渡しして家と家をつないでいる。いずれも仮の橋であり、ガタついたり時には折れたりもするが、橋から落ちたところで泳ぎに長けた者ばかりで何の問題もない。
しかし昨今は別の問題に直面している。床下の水面には漂着したプラスチックごみが溜まる一方なのだ。ある村人はバジャウ族の多くが伝統的なライフスタイルを捨て、西洋人のような暮らしを始めていることも一因だと話している。
現在のバジャウ族はスーパーマーケットに行って買い物をしているためにビニール袋やペットボトルなどのプラスチックごみが増える一方であるという。昔は買い物の包装は紙だけだったのだ。
半遊牧民であるバジャウ族は、近代西洋の生活様式にますます取り込まれており部族の伝統は急速に失われつつあるという。また村の周囲の海だけでなく、彼らの食事のほとんどを占める魚の汚染も深刻さを増している。
ラリサン氏のように漁の伝統を頑なに守る人々もいるのだが、いったん現代的な生活に触れてしまった人々が昔の暮らしに戻ることは難しいと言わざるを得ないだろう。加えて深刻な海洋汚染が島での生活を脅かしている。海に適応したユニークな“海人部族”の滅びは残念ながら近いのかもしれない。
参考:「Daily Star」ほか
文=仲田しんじ
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提供元・TOCANA
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